70話 絶望は回り続け円をなす。動き続ける円こそが、エネルギーの根源。
70話 絶望は回り続け円をなす。動き続ける円こそが、エネルギーの根源。
サクっとウィーンの腕を切り飛ばすカミノ。
「ぎゃぁあああ!」
「怨嗟も憤怒も関係ない。俺は俺のワガママで、お前をいたぶって殺すだけ。つまり、俺はラベンチャと同じってこと。ここまで言えば、もう全部、理解できるな? 懇願なんてするだけ無駄だってこと」
「……うぅう……うぅうう……」
「ラベンチャが他人をいたぶるところをずっと見ていたお前なら、全部理解できるはずだ。お前がどれだけ救いを求めても無駄だってこと。実際、無駄だっただろ? 誰か救われたか? まあ、キメラは一応、救われたって形になるのかな? ……じゃあ、もしかしたら、お前にも、キメラにとっての俺みたいなヤツが来てくれるかもね。そんな確率の低い未来に期待していればいいんじゃないかな?」
と、ペラペラしゃべっている間も、
カミノは、ウィーンをボコボコにしていた。
ズタズタのグチャグチャになったところで、
ウィーンは、息も絶え絶えの状態で、
「……俺には……どうすることも……できなかった……」
と、まだ、懲りずに、懇願を続けようとする。
「ラベンチャは……上級の議員だ……逆らえば……俺も殺される……だから、見ているしかなかった……それだけの話だろ……なんで、それだけの俺が……こんな……」
「イジメは見ているだけの人も罪……とか、そんな話をしたいわけじゃないよ。さっきから言っているだろ。俺はただ、お前を絶望させて、そのエネルギーを回収したいだけ」
「……意味が……わからん……くそが……くそが……」
途切れ途切れに、想いを吐露するウィーン。
「誰か……助けて……」
救いを求める。
必死に。
本気で。
全力で、世界に懇願する。
その結果、
「誰もこないね」
カミノは、ウィーンの股間を圧迫の魔法で押しつぶす。
「ぐげぎゃぉおおおおっ!」
拷問は続く。
誰も助けにはこない。
世界は残酷だから。
★
ようやく許しを得て、真っ白な灰になったウィーン。
ラベンチャの時とは違い、その灰を踏みつけることはなく、
カミノは、
「さて、それじゃあ、次の獲物のところに行くか……しっかし、この、絶望エネルギーを回収する作業、ダルいなぁ……『我が子のため』っていう強い動機と原動力がなければ、とてもやっていられない……」
深いタメ息をつくカミノ。
今のカミノからすれば、他人を拷問するのは、
『ゴミ収集の仕事』とほぼ同感覚。
『きつい』『きたない』『くさい』の3K。
ちなみに、カミノの父は、壊れる前、ゴミ収集の仕事をしていた。
民間のゴミ収集業者と違い、公務員としてのゴミ収集の仕事は、
作業時間も福利厚生もシッカリとホワイトで、
確かに、きつい部分もあるが、民間と比べればかなりマシ。
『やっぱり、公務員が最強だったなぁ。なりたかったなぁ』などと、そんなことを思いつつ、カミノは、獲物を探す。
(ニコトピアを取り戻したら……神様権限を駆使して、公務員になろう……それで、年収680ぐらい貰って、テキトーなところにマイホームを建てて、のんびり暮らそう)
などと、理想の未来を夢みつつ。




