64話 合体なんてしたくないけれど……
64話 合体なんてしたくないけれど……
「とっと、おわっ!」
速すぎる動きに、体がついてこられない紙野。
うまく着地できず、地面につま先がつっかかって、派手に転倒。
2、3回ほど、空中で回転して、最後には、顔面から地面にダイブ。
「……痛ったぁ……」
顔をさすりながら、
(これは、ダメだな……正攻法で行こうとした場合、ちゃんと時間をかけて練習しないと、まったくもって使い物にならない……)
というわけで、紙野は、『極羅の剣翼』を『正攻法で扱うプラン』を早々に諦める。
(……キメラ自身なら、自分の力だから、たぶん扱えるよな……俺の身体能力がゴミだから、完璧に扱うのは無理でも、制御ぐらいは出来るはず……)
少しだけ頭を働かせて、
(あまり、やりたくないが……キメラと合体するか……できれば、俺は俺のままでいたいんだけど……プライマルメモリの主役級と合体なんてしたら、人格をだいぶもっていかれる気がするからなぁ……ほぼネ〇ルに乗っ取られたピ〇コロさんみたいに……)
などと、不安に思っていると、
『キメラの剣』が、脳内に直接語り掛けてきた。
(合体などしたら、余計に弱くなるのでは?)
そのまっとうな問いかけに対し、
紙野は、
(普通のアマルガメーションを使えば、当然、今よりももっと、動きが鈍くなる。けど、合体関係にも、裏技がいくつかあってね。『共鳴融合』とか『輪廻アマルガメーション』とか。他にも、『永遠に合体したまま』って誓約をつけることが絶対の前提になるが、『ただ強くなるだけの合体』も、実のところ、出来なくはない)
そう言ってから、
「上エックス、下ビー、エルワイ、アールエー、モキュモキュ、フルモッキュ、P3256097」
デバッグコマンドを入力したのちに、
少し逡巡。
(これを使えば、確実に強くなれるけど、人格に変化が起きる可能性が非常に高い……んー……さて……どうしよっかなぁ……できれば、やりたくないってのが本音……できれば、俺は俺でいたい……)
『我が子に対する想い』に変化が生じることを恐れている紙野。
キメラと合体することで、『ニコトピアを復活させたい』という信念に揺らぎが生じてしまったらどうしよう――そういう不安の中で悩んでいる。
(合体したくない……けど、今のままじゃ……)
などと悩んでいると、
そこで、ラベンチャが、
魔力とオーラを込めたナイフを投擲してきた。
回避しようと思えばできるのだが、
調整ミスでまた吹っ飛ぶ可能性を考慮して、
あえて、その投擲を体で受け止める紙野。
「どえぇえええっ!」
胸に刺さったナイフは、直後、爆発を起こした。
普通なら、その場で、上半身が吹っ飛んで終わりだが、
紙野は、
「痛ぇよぉ……ちくしょう……痛ぇよぉ……俺、紙装甲すぎるんだよぉ……てか、ふつうに弱すぎるんだよぉ……どちくしょう……」
その場で、バタバタともだえ苦しむだけで済んだ。
ズタボロになってはいるものの、体の損傷はみられない。
その異質な光景を目の当たりにしたラベンチャは、眉間にグっとしわをよせた。




