表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

513/1228

61話 政治に向いている者などいない。


 61話 政治に向いている者などいない。


「――ああああああああああっ!」


 『彼』は、絶死を積んで底上げした魔力とオーラの全てを両手にぶち込んで、


「異次元砲ぉおおおおおおおおおおっ!!」


 最初で最後、人生最大の一撃。

 この一撃を放って死ぬと覚悟した一手。


 その火力は当然膨大。

 同程度の存在値の敵なら蒸発確定。

 ――けれど、


「――異次元砲」


 ラベンチャは、右手に魔力とオーラを綺麗に溜めてから、タイミングを見計らって解き放った。


 ラベンチャの異次元砲と『彼』の異次元砲は、互いの間でぶつかり合い、数秒ほど、押し引きを繰り返したが、最後には、パチュンと、世界に溶けるような音を残してどちらも消失した。


 相殺されたエネルギーの余韻だけが世界に残る。

 すべての力を出しつくして真っ白になった『彼』と、

 まだまだ余裕を残しているラベンチャ。


 勝敗は火を見るより明らか。


 ガクリと、膝から崩れ落ちた『彼』に、

 ラベンチャは、


「くくく……さすがに手がしびれたよ。よかったじゃないか。最後の最後に、私の手を痺れさせることが出来て。冥途の土産としては、これ以上ないだろう?」


 ラベンチャに人生をめちゃくちゃにされた『彼』は、

 最愛の家族を心に想いながら、


「母さん……フワリ……ごめん……俺……なにも……できな――」


 最後まで言い切ることなく、

 そのまま完全なる生命の停止を迎えた。


 その様を見たラベンチャは、

 満面の笑顔で、


「どうだい、ウィーンくん。素晴らしい芸術だと思わないか? できれば、もう少し熟成させたかったが、青い果実も、それはそれで味がある」


「俺に芸術は分かりません。教養がないもんで」


「いかんな、ウィーンくん。君も、最高位冒険者。いずれ、上級議員になる者。教養ぐらいは身に着けておかんと」


「俺は、議員になる気はありませんよ。政治は向いていない」


「政治に向いている者など、この世におらんよ。選ばれたヤツが好き勝手なことをするだけの簡単なお仕事――それが政治家だ」


 などと、真理を語り合う二人。


 そんな二人の元に、


「……」




 ――紙野が降臨する。

 それは必然。

 絶対にゆるぎない、世界に刻まれた最低条件。




 どこからともなく、音もなく、とつぜん現れた紙野に気づいた二人は、

 即座に、臨戦態勢をとった。


 ウィーンが、


「お前……確か、昼間に、カザミと一緒にいた……」


 『ジェイズの荷物持ちだ』と気づいたウィーンは、

 警戒心を少しだけ緩めて、


「そんなところで何をしている? というか、どうやって現れた?」


 普通に疑問を投げかけるが、

 紙野は、ウィーンの言葉をシカトして、


「……これ、使えるな……」


 真っ白になった死体を見下ろしながら、

 ボソっと、


「なかなかの潜在能力……絶死のアリア・ギアスでも引き出しきれない複雑な深み……こいつ、もしかして、プライマルメモリの因子か……ただの因子ではなく、主役級を張っていた可能性がある……」


 などと言いながら、

 真っ白になった『彼』の『中心』を引き上げていく。


「使わせてもらうぞ。対価は……そうだな……」


 そこで、紙野は、ラベンチャに視線を向けて、


「……あいつを凄惨に殺してやるよ。とことん地獄を見せてやる。それと、プラス、そのツボの中で死んでいる二人も回収してやる。それでどうだ?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ