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55話 割り切った結論。


 55話 割り切った結論。


 紙野のターゲットは、上級国民20万人と、上位冒険者10万人の合計30万人。

 それだけの数を狩っていくとなると、最大級の効率化を図る必要性がある。


「優れた力を持つ連中は皆殺しにしていく。お前らには、そのサポートをやらせる。異論は認めない」


 強固な口調でそう言い切った紙野に、

 マイは、


「……な、なぜ、強者を殺すの?」


 と、純粋な質問をぶつけていく。


 その問いかけに対し、紙野は、


「……」


 少しだけ悩んでから、


「大義のため」


 と、濁した紙野にマイは、


「さっき、あなたは、トコ・ドラッグを守るためなら何でもする……そう言っていた……それと何か関係があるの……?」


「……」


 紙野は、さらに、数秒悩んでから、


「ニコトピアは、現在、消失している」


 と、事実を並べていく。

 紙野の暴露を受けて、マイは目を見開いた。

 心のザワつきが、時間経過と共に強くなっていく。


(ニコトピアが消失? それは、どういう……)


 それだけを言われても、意味を介することは難しい。

 ただ混乱してしまう。

 そんなマイに、紙野は、続けて、


「ニコトピアを復活させるためには、膨大なエネルギーが必要だ。絶望は大きなエネルギー。けど、『この世界全てを絶望させるための強さ』が俺には足りない。勇者か魔王に出てこられたら、俺は狩られてしまう。ニコトピアを復活させるまで、俺は死ねない。だから、俺自身の経験値稼ぎの意味も含めて、こそこそ隠れながら強者を狩っている」


 真実を口にしていく。

 すべての真実を聞いた上で、マイがどういう判断を下すのか、それが少しだけ気になったから。


「俺は、この世界の人間がどうなろうと知ったこっちゃない。俺にとって大事なことはニコトピアと、そこに生きる『俺が創造した子供たち』だけだ。この世界を絶望で染め上げることで、あの子たちを取り戻せるというのであれば……俺は何でもする」


 覚悟を示した紙野。

 絶対にゆるぎない決死の想いを受けて、

 マイは、


「……わかった……私も手伝う……」


 紙野の目を強い目で見つめて、


「私にとっても、ニコトピアは大事だから……消失したというのが、どういう意味なのか、イマイチ分からないけれど……取り戻すために、この世界を絶望させなければいけないというのであれば……それに従う……冒険者として、二度目の人生を生きてきたから、この世界にも、そこそこ愛着がわいてきているけれど、ニコトピアと比べたら、正直、かなり劣るから」


 そんなマイの発言に対し、

 それまで黙って趨勢を見守っていたイチジョーが、


「マイ……大犯罪者の片棒を担ぐっていうのか? もし、バレたら、国中の強者から、最上級の逆賊として命を狙われるぞ……」


 そこで、カザミが、


「けど、拒否したら、ここで殺されるんだろ? 今死ぬか、あとで死ぬかの選択肢なら……俺は、後者を選びたい」


 サラっと、真理を口にした。

 場の流れに身を任せて生きている彼だからこその結論。

 短絡的に生きている彼だが、別に、頭がカラッポというわけではない。

 また、『倫理観が薄い』というのもあって、『これから、30万人を殺していく』と言われても、『生きるためにそれが必要なら仕方ない』と割り切って考えることもできる。



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