44話 元の世界に対する意識の違い。
44話 元の世界に対する意識の違い。
「……やらないとは言っていないわ」
そう言いながら、マイは、心の中で、
(2億あれば、チームとしての力を、かなり底上げできる……良いアイテムに、良い装備品……チームが強くなればなるほど……『元の世界に帰るための方法』を見つけやすくなる)
マイには目標がある。
それは、
(私は絶対に元の世界に帰る……そして……ニコトピアの続きを見るんだ……)
彼女は、ニコトピアのガチ勢だった。
元の世界に戻ってニコトピアの続きを見る――そのためだけに頑張っている、生粋のファン。
ちなみに、彼女たちと、キムロでは、死んだ時期が異なる。
マイたちは、ヌルが暴れるよりも前に死んで、この世界に転生している。
だから、あっちの世界がヌルの暴走によって消滅していることは知らない。
(私としては、ぜひ、2億チャレンジに挑戦したいところだけど……)
そこで、マイは、イチジョーに目線を送り、
「ジョー、どうするの?」
リーダーの意見を確認するマイ。
イチジョーは優秀な男。
だから、彼女は、彼に牽引役を任せた。
生きのこるため。
チームを強化するため。
元の世界に帰るため。
――そのために、マイは、『イチジョーについていく』と決めた。
だから、勝手な行動はとれない。
チームとしての形が不安定になることは、遠回りにしかならないと理解しているから。
イチジョーは、顎に手をあてて、
「……俺たちの最終目的である『全員で最高位上級国民になるという夢を叶える』ためには……大金と経験値が必須ではある……」
と、そんな事を口にする。
イチジョーは、元の世界には帰れないだろうと思っているし、別に帰りたいとも思っていない。
だから、この世界で、同郷の仲間3人で『仲良く幸せ』に生きていけたら、それでいいと思っていて、マイもカザミもそう思っているだろうと、勝手に認識している。
ちなみに、マイもカザミも『最高級上級国民になりたい』とは思っている。
その方が、色々と生きやすいのは間違いないから。
しかし、『全員で幸せに生きていくこと』を目的にしているのはイチジョーだけ。
「上級国民を殺せるだけの殺人鬼を倒す経験値と、その報酬である2億……その二つを獲得できれば、夢に近づく……」
状況を冷静に並べてから、
「……やろうか」
「当たり前だ! もし、『やらない』なんて言ったら、リーダー交代総選挙まったなしだったな」
いつだって、リーダーの座を狙っているカザミ。
前世で、カザミは、クラス内カーストトップというポジションについていた。
そのため、『自分がグループの中心』であることに慣れ切っており、その習慣は、『自分が中心でなければ嫌』という強いワガママにまで昇華されている。
ただ、イチジョーの総合的なスペックが、明らかに、自分よりも高いため、『ぐぬぬ……』と唸る事しか出来ないのが現状。
『効率的にチームが成りあがっていくため』には『イチジョーが中心をしている方が合理的だ』と理解できるだけの頭はあるのだが、それでも、リーダーの座をどこかで諦めきれないので、ちょいちょい、その願望が言動に現れる。