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40話 紙野とクリミアは何も変わらない。


 40話 紙野とクリミアは何も変わらない。


「あと、これだけは言っておこうか。『ゲスな欲望』による絶望は、確かにすごいエネルギーなんだけど、『そのゲスな欲望に打ち勝つエネルギー』の方がもっと大きいんだ。あんたが、本当に、世界のために頑張る気があるなら、『自分の弱さ』に立ち向かうべきだった。楽な方に逃げたカスが、大層な口を利かないほうがいい。みっともないから」


「……えら……そうに……」


 死にかけのクリミアは、

 この状況になっても、

 決して反省したりせず、

 自身の悪意と憎悪を、紙野に向け続ける。


「お前は……楽な方に逃げなかった……とでも言うのか……」


「俺は逃げているよ。武力からも、命からも。大いなる力を持つ者の大いなる責任からも。俺にとって大事なものはニコトピアだけだ。それ以外はどうでもいい。だから、『すべての世界にとって最善の手法』なんて目指さない。一番楽に、最短で、確実に、俺の世界を取り戻すためだけに俺は行動する。俺はお前と同じだよ。自分の欲望のために、弱さから目を背けて、楽を求めている。……現状で、お互いにとって重要なことは、俺の方が強いから、お前から全部を奪えた。それだけだよ。つまり、俺が言いたいのは『俺より弱い程度の雑魚が、一丁前の口をきくな』ってだけ」


「……」


 クリミアは、紙野の話を、しっかりと咀嚼し、受け止めてから、



「……何度でも……生まれ変わって……同じことを……してやる……」



 最後に、そう言い捨てて、ピクリとも動かなくなった。


 よごれて、腐って、けがれて、薄れて、すたれて、よどんで、

 そして、『がんじがらめの不自由』になる、命の業。


 そんな、愚かさの結晶から目を背けて、

 紙野は、クリミアにイジメられていた親子に目を向ける。


 親子は、抱き合いながら、

 おびえた目で、紙野を見ている。


 現状がイマイチ理解できていないがゆえの恐怖。

 自分たちは救われたのか、それとも……

 ――と、そんな、どっちつかずの不安定さに怯える二人。


 だが、そんな現状にメスをいれようと、

 いまだ赤いオーラに包まれている娘の方が、

 決心したように、紙野の目を見ながら、


「……あ、あいつを……あのクズを殺してくれて……ありがとうございます……」


 と、そう言いながら頭を下げた。


 紙野は、


「悪いけど、俺にとって大事なものは、ニコトピアだけなんでね」


 そう言いながら、右手を、親子に向ける。


「お前の方は、絶死で勝手に死にそうだけど……母親の方は、まだ死にそうにないから、この手で殺してやるよ。そこで死んでいるクズとの会話でも言った通り、俺は、そこのクズと変わらない。自分の欲望のためなら、誰でも殺せるし、どんな拷問でも出来る。痛めつけてから殺してやるよ。その絶望を糧にして、俺は、俺の世界を取り戻す」


 そう言いながら、

 デバッグコマンドを使って、拷問系の魔法をアンロックしようとする紙野。


 だが、そこで、

 それまでずっと黙って紙野の行動を見守っていたトコが、

 紙野の前に立ちふさがった。


「……どうした、トコ」


「そこのカスみたいな親子では、エネルギー量が少なすぎる。無意味」


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