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37話 紙野さん、ザッコ。


 37話 紙野さん、ザッコ。


(……そんなしょうもない人生であってたまるか。私の人生は私のものだ。おいしい権利はもらうが、めんどうな義務を背負う気はない。私は、まだまだ自由を謳歌する。気ままに、望み通りに、他者の命で遊びながら、人生を楽しみつくす……私は、そんな幸せな人生を、世界から確約されている特別な人間!)



 クリミアは、頭がいいから『現実の推察』も出来るのだが、

 しかし、性根が腐っているので、

 『自分にとって都合がいい妄想』にすがりつくことも忘れない。


 ――これが人間。

 クリミアは、決して奇妙な精神性を有しているわけではない。

 残虐性や変態性をのぞいて、根本だけを見れば、いたって普通の人間。


 脆い自分を守ろうと必死な、弱い人間。


「私は、まだまだ、人間で遊ぶ! まだ終わってたまるかぁ! まだまだ、やりたいことは腐るほどあるんだぁ!」


 ゲスな欲望を叫びながら、

 クリミアは、紙野に殴り掛かった。


 魔法が謎に消されるのなら、物理でシバきあげればいい。

 極めて単純な話。


 ガツンッ!


 と、顔面を殴られて吹っ飛ぶ紙野。

 その感触から、クリミアは、


「ん?! 弱いぞ! お前、魔法を消せるだけか! はははぁ!」


 紙野の存在値と戦闘力がゴミであることを理解するや否や、

 残虐性全開の顔で、紙野をボコボコにしていく。


 殺してしまわないギリギリのラインで、紙野を痛めつけていくクリミア。

 自分を少しでも不快にさせた罪を、絶望で払わせようとする。


 徹底的に悪逆非道な男。

 それが、ズンダ・クリミアというクズの本質。


「どうした、抵抗してみせろ! 魔法を消せるのと、ワケの分からん戯言をほざくしか能がないのか?! えぇ?!」


 クリミアの暴力を受けている中で、

 紙野は、


(……全然、動きが見えないな……こいつ、ちゃんと、普通に強い……まったく対抗できる気がしない)


 自分の弱さに辟易していた。


(頑張ったところで、俺が、こいつと同じぐらい強くなれるとは思えない……レベルは、まあ、がんばれば上げられるだろうけど、武道の世界で、俺がどうこうできるビジョンは描けない……)


 まだ、『鍛錬を積んだ経験』がないので、

 自分に『才能があるかどうか』すら分からない段階だが、

 しかし、紙野は、自分では無理な気がする――と、

 そうそうに、自分に対して見切りをつける。


 トコのためなら、いくらでも頑張れる自信があるが、しかし、頑張り方を間違えば、大事なものを守れない可能性があることを紙野は知っている。


 サメは水の中では最強格だが、陸に上がれば、ぴちぴちはねて死ぬことしか出来ない。

 タカは空の上では最強格だが、水にしずめば、ブクブク溺れて死ぬことしか出来ない。

 ものにはすべて、適正というものがある。

 やみくもに頑張ればいいというわけではない。


 紙野が頑張るべきステージは、武の世界ではない可能性がある。


「まだまだ殺さんぞ! とことん苦しめ! 恐怖に顔をゆがませろ! 泣け、泣け、泣けぇええええ!」


 とにかく、紙野の歪んだ顔が見たくて仕方がないクリミア。


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