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27話 本物の不良は……


 27話 本物の不良は……


「……100は無理か……じゃあ、龍毒ランク50……50もダメか……」


 検証を始める紙野。

 その結果、ランク10の状態で使えば、どうにか魔法を発動することが出来た。


「うぼぇぁっ!」


 龍毒は、かなり高位の毒魔法なので、

 ランク10とはいえ、かなりの重荷となる。


「――『どんな魔法でも使えるデバッグコマンド』が機能しているのはいいけど、今の俺だと、ランク10でしか使えないのか……ゴミすぎるな。しかも、ランク10なら無制限に使えるってわけでもなく、今の一発だけで、魔力が底をついた……『ステータスをカンストさせるデバッグコマンド』は機能してないから使えないし……色々と制限があってウザイな……」


「うぐぅ……た、たかがランク10の毒で……なんで……」


 筋に力が入らず、ピクリとも動けなくなっているキムロ。


 疑問符の海に溺れるキムロに、

 紙野はたんたんと、


「毒ダメージは極限までカットして、『動けなくなるよう』にカスタムして龍毒を撃った」


 簡単に解説してから、


「ランク10だからってナメちゃいけない。限界まで極限特化させれば、部分的にランク30級にまで高めることも可能。ポケ〇ンで例えれば分かりやすいかな。Aの種族値以外を全部1にする調整を施せば、サ〇チムシでも、A175になってザシ〇ンを超える。みたいな感じだよ。普通は、そんな調整はゲームバランス的にありえない。けど、デバッグコマンドを使えば、そういう無茶も可能。タスキと玉の同時持ちとかも可能。ほぼ何でもできる。――『ほぼ』ね」


 そんな紙野の言葉など、キムロはほとんど聞いていなかった。

 彼が気にしているのは、己の現状だけ。


(やばい……マジで動けねぇ……)


 最悪の時は、さっきトコから奪った魔カードを使うつもりだったのだが、


(……魔カードは使えない。他の切り札も特にない……く、くそ……詰みか……)


 頭の中で、そう判断すると、

 キムロは、


「……う……ぅう……ぐっ……た、助けて……殺さないで……もう、死にたくない……」


 『詰み』だと確信したと同時、

 それまでの態度を即座に一変させて、

 紙野に慈悲を請う。


 切り替えの早さだけは、ヤクザの王様クラス。


(こいつは間違いなく日本人……だったら、他のどの世界の人間よりも命に甘いはず……)


 平和ボケしきった日本人の甘さを理解しているキムロは、

 紙野の『日本人度合い』に期待して、必死にすがりつく。


「たのむ! 二度と、お前は逆らわない! それに、俺を活かしておくメリットは大きい! 俺はずっと誰かの子分をやってきた! そういう人生だった! そういうやつを下に置いておくと上は楽になれるもんだ!」


 メリットを提示していく。

 その上で、


「頼む……お願いだ……死にたくないんだ……」


 弱い部分を見せて同情をかっていく。


(ここまですれば、たいていの日本人は、情にほだされる……日本人は激アマな平和ボケバカ野郎だから)


 表情には出さないように、

 しかし、心の中では、しっかりと舌を出していく。


 『本物』の『不良』は反省などしない。

 両親や教師に殴られようが、

 少年院にぶちこまれようが、

 絶対に反省などしないし、悪事をやめることもない。

 楽な道に流れることしかできないガラスのハート。

 一般人にとっては迷惑でしかない悪意の塊。


 それが、『本物の不良』といういびつな種族の本質。


 たいていの『不良』は、思春期を抜ければ『過去を反省』するマイルドヤンキーなのだが、キムロは、一応、『本物の不良』に属する獣。

 『本物の不良としてのランク』は『下の下』だが、一応、本物。

 永遠に不良的思春期を抜けられず、将来的には、暴走族・チーマー・反グレ・ヤクザの道に進んで、人様に迷惑をかける人外。

 仮に、運よく道が開けて、まともな社会人の道に進んでも、なかなかドぎついパワハラ野郎になって訴えられて破滅するのがオチのクズ。




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