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20話 みっともなく、みじめに、美しく。


 20話 みっともなく、みじめに、美しく。


「ドラゴンボ〇ルなら、ちゃんと読んでいる。セ〇編で例えてくれたから、キムロさんの状況がよくわかったよ。ちなみに、俺は、ミスタ〇サタンがキャラとしては一番好きだ。勘違いものが結構好きでね。同じ理由で、ワンパ〇マンだと、キ〇グが一番好きだね。ちなみに、漫画の中で一番好きなのは『ヒカル〇碁』だ。俺も碁打ちだったから、よく憧れた。最強の幽霊が、毎日指導してくれて、いざと言う時は代わりに打ってくれるなんて最高だ」


「……ははは……間違いなく同郷だな」


 そう言ってから、

 キムロは、


「俺は、他人に対して親切心を見せるタイプじゃないが……さすがに、異世界で出会った同郷の人間には、ちょいとばかし、思うところがなくもない」


「じゃ、じゃあ――」


 と、希望の光を灯った顔をする紙野に、

 キムロは、冷徹な表情で、


「もし、状況が違っていれば……多少は、手を貸していたかもしれないな」


 と、突き放すような言葉を口にする。


「お前が要求してきたものが、仮に、『生きていくための仕事が欲しい』とか、そういう系統の願いだったら、まあ、知り合いの誰かに紹介するぐらいはしてやっていたかもなぁ。気分が良いときだったら、あるいは、子分にしていた可能性もなくはない。日本の話が出来る子分なんて希少だからなぁ。……しかし、『この女を殺さないでほしい』という願いだけは、どれだけ気分が良いときであっても叶えてやることはできないな」


 当たりまえの事を口にしてから、

 キムロは、トコに殺気をむけなおす。


 あっさりと、『必死のお願い』をはねのけられた紙野。

 ここまでバッサリと『NO』をつきつけられれば、

 普段の紙野ならば、冷静に、『そりゃそうだろう』と引くだろうが、

 しかし、トコ・ドラッグに関することだから、引くことはできない。


 ――娘の命がかかっているのだ。

 親として、この上なく、みっともなく、みじめに、美しく、あがき続ける。


 紙野は、必死の形相で、

 キムロの足元にすがりつき、


「お願いします! お願いします!」


 喉がちぎれるほど、全力で叫びながら、


「その子は、俺の子供なんです! いちばん大事な子なんですよ! いままで、たくさんのものを奪われてきた人生だった! せめて! その子だけは! 俺から、奪わないでください!」


 トコを守ろうと必死になってあがく姿を見て、

 キムロは、


「良識を併せ持つ一般的な日本人なら、情にほだされたりもするんだろうが……もともと不良で、かつ、『人生を買えるお宝』を前にしている今の俺が、情で物事を判断したりしない」


 そう言い捨ててから、

 すがりついてくる紙野の顔面に裏拳を叩き込む。


「ぐぶふっ!」


 存在値の差が激しいので、その気になれば、紙野の頭を一発で粉砕することもできたが、しかし、キムロは、別に快楽殺人者ではないし、一応、『同郷相手に対する情』がゼロではないので、『動けなくなる程度のダメージ』におさえた。


「う……ぐぅ……」


 激痛に耐えながら、

 紙野は、


「お願いします……トコだけは……殺さないで……なんでもするから……」


「お前が死ぬまで必死に働くよりも、この女を殺す方が、1億倍価値がある」



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