9917話 絶対に買いかぶられる男。
9917話 絶対に買いかぶられる男。
死ぬほど浅いことしか考えていない超苺。
しかし、クロートは、別の意味合いだと考える。
「お前はいつもそうだな、超苺。いつもいつも、『自分だけの手柄』を、わざわざ、まわりに分配して、全員の評価が上がるように、裏で暗躍する……敵には容赦ないくせに、身内には甘すぎる」
(手柄を分配とか、そんなこと、生まれてこの方、一度もしたことないのに、どうして、お前は、俺が、それを、『いつもしている』と認識しているんだ? いい加減、自分が誤解をしているということに気付こうぜ。頼むからさぁ)
言いたいことは山ほどあるが、
しかし、それを口にするのは面倒くさい。
――だから、結局、誤解が解かれることはなく、
カバンの中に放置したイヤホンみたいに、
どんどん、どんどん、複雑にからまってくる。
「超苺。そういう部分でも、お前は、真・神帝陛下に通ずるものがある。陛下ほどではないが、お前はすごい男だ」
クロートの中での最高評価をもらった超苺は、
(……頼むから、俺なんかと陛下を比べないであげて。陛下がかわいそうだから)
心の中で、しんどそうに、そうつぶやく。
しかし、表情は、いつも通りの無表情。
いつだって、表面上はクールなまま。
クロートの過大評価に対し、
超苺は、一言だけ、
「………………買いかぶるな。俺は大した男じゃない」
と、いつも通り、『事実』を告げる。
ソレは、決して、『テキトーに放った戯言』などではなく、『心からの本音でコーティングした懇願』である。
『お願いだから、買いかぶらないで、もう、ほんとめんどくさいから』という本気のメッセージ。
しかし、クロートは、超苺の『想い』を『ゴリゴリの本音』だとは捉えず、
「謙遜も過ぎると、嫌味だぞ、超苺」
美しい『慎み深さ』だととらえてしまう。
そして、また過大評価が加速する。
超苺に対する勘違いは、決して止まることがない。
(う、ウザすぎる……人の話はちゃんと聞いてくれ。俺、ずっと言っているだろ。俺は総合的には無能だって。存在値と戦闘力に関しては、そこそこマシだけど、それ以外は、本当に何もない、頭からっぽの馬鹿なんだよ)
超苺が、心の中で不満を口にしている間、
クロートは、奪い取ったトウシを解析して、
彼が何をしようとしていたか、その詳細を調べていく。
「……どうやら、田中トウシは、最初から『違う世界』を用意していて、そこに、この世界で死んだ人間の魂を保護しようとしていたっぽいな……その上で、この世界で死を巻き散らかし、センエースの覚醒を促そうとしていたようだ」
クロートの話を聞いた超苺は、
(……おお、解析するのはやいねぇ。さすが、クロート。賢い男だ。そういうところも、腹が立つなぁ。顔がよくて、頭もよくて、コミュニケーション能力も高めで、完璧じゃないか……俺にないものを全部もっている。俺もクロートみたいな感じで生まれてきていればなぁ……ハッキリ言って、俺、ひどすぎるんだよなぁ。バカで、ブサイクで、面倒くさがりの陰キャで……まあ、でも、この酷すぎる状態の方が楽でいいのも事実なんだよなぁ……クロートになりたいかって言えば、なりたくはないんだよなぁ……)