9916話 ま、どうせ、センエースがいるしぃ、大丈夫っしょ。
9916話 ま、どうせ、センエースがいるしぃ、大丈夫っしょ。
(……自爆されて死にそうになったから、ヤベェと思って、反射でカウンターしただけなんだけどなぁ……一挙手一投足にワナを仕掛けるような繊細なムーブなんて、今までやったことないのに、なんで、うちのクロートさんは、俺が『いつもやっている』みたいに、得意満面の顔で解説してんだ? ソースのない間違ったことを、さも本当のことかのように吹聴するの、やめてもらっていいすか?)
と、心の中では、クロートに対する不満だけで一杯だった。
この不満は、クロートに対してだけ抱いているマイナスではない。
周囲の人間は、基本的に、超苺のことを誤解している。
――超苺的には、本当なら、懇切丁寧に、その誤解を殺したいところなのだが、
しかし、超苺は、
(ああ、もう、めんどくさい……もういい……別に、田中トウシの誤解を解いたところで、いろいろ手遅れだし……)
いつものように、心の中で『諦め』をつけると、
体内にとどめているオーラと魔力を底上げして、
ゆっくりとした歩調で、トウシの近くまで歩く。
トウシは、キっと、強い目で、超苺をにらみつけて、
「戦闘思考力という点において、ワシより上の化け物がおるとは思っとらんかったなぁ……セイバーも奪われて、自爆もスルーされて……完全に、ワシの負け……認めたる。超苺。おどれは、ハンパない」
(……女の子をチラ見して、たまたまカウンターが決まっただけだよ。……戦闘思考力という点で言えば、俺は、お前の遥か下にいる……んだけど、それを説明するのもめんどくさい)
心の中で、そうつぶやいてから、
「………………『トゥインクル・EZZパニッシャー』……」
封印の魔法を使って、
トウシを封じ込めようとする。
もはやトウシは抵抗せずに、それを受け入れていた。
しかし、諦めているわけではない。
完全に封印される直前、
トウシは、超苺をにらみつけたまま、
「超苺……流石のおどれでも、センエースにだけは勝てんぞ……」
最後にそう言い捨てた。
ソレがあるからこそ、この敗北を受け入れることができた。
逆に言えば、『最後の砦があるから、諦めてしまった』ともいえる。
もし、センエースという『頼り』がいなければ、トウシは、もう少し粘っただろう。
愛するパートナーのためにも、一応、世界のためにも……
色々な責任を背負って、最後の最後まで粘っただろう。
センエースという強すぎる『頼みの綱』がハングリー精神を殺す。
超苺の魔法が輝きを増していった。
光が収束した時、
トウシは、完全に封じ込められていた。
『完全に動けなくなったトウシ』を横目に、
超苺は、チラっと、クロートに視線を流す。
その視線の意味を読み取ったクロートは、
「田中トウシ……お前が倒したのに、俺が預かっても構わないのか?」
その言葉に対し、
超苺は、静かに首を縦にふった。
(女の子だったら、俺が身柄を預かったんだけどねぇ……あと、田中トウシを回収しちゃったら、解析する係もやらざるをえないし。そんな面倒くさいことしたくないし、もっといえば、うまくできる気がしない。そういう『ガチで頭をつかう作業』とか、ほんと苦手なんだよ。俺は、女の子を見ている仕事しかしたくない……改めて考えると、ゴミだな、俺……)
と、そんな浅いことしか考えていない超苺。
しかし、クロートは、別の意味合いだと考える。
「お前はいつもそうだな、超苺。いつもいつも、『自分だけの手柄』を、わざわざ、まわりに分配して、全員の評価が上がるように、裏で暗躍する……敵には容赦ないくせに、身内には甘すぎる」