9910話 超苺の破格さに嘆息。
9910話 超苺の破格さに嘆息。
超苺にも見栄はある。
『ラッキースケベどうこう』に対する想いが、女性にバレるのは、『さすがに、恥ずかしい』という、普通の感性はある。
だから、その部分は心の奥深くに隠している。
ゆえに、超苺の中にいる女性たちも、超苺の『本質部分』には気づいていない。
彼女たちの超苺に対する認識は、
『ありえないほどの深い愛情を持った、神秘的な紳士』
『常に冷静で、寡黙で、慎み深く、余裕があり、孤高で、闘っている姿も所作も全てが美しいナイト』
超苺は、『自分の無様さを見せないようにする』というカッコの付け方はするが、
『自分をより大きな存在に見せよう』というカッコの付け方はしない。
そういう『かっこのつけ方』をしても、タカが知れていると認識しているから。
超苺は、多くを望まない。
自分のようなアホでは、望んでも何も手に入らないと認識しているから。
――そんな、彼のスタンスは、
内情を知らない者の目には、いつだって、
『物憂げでミステリアスな美青年』とうつる。
『超苺の本当の内面』を知らない者にとって、超苺は、『少女漫画から飛び出してきた』かのような『女性の理想が具現化した完璧なイケメン』である。
そんな超苺に救われた結果、
ザラキエリも、超苺に心酔することになる。
――超苺こそが、求めていた理想の神である、と、
そんなことまで思う始末。
当然、誤解なのだが、しかし、その誤解を修正する機会は訪れない。
『超苺の世界』に避難している間、彼女たちにとっての『世界』は、『超苺の世界』だけがすべてになる。
ソコが、誰にも害されることがなく、愛に満たされている自由な楽園――となれば、
もう、他の世界のことなどどうでもよくなる。
『完璧なイケメン』に魂ごと包まれて、魂のすべてが自由になれる究極の理想郷。
ザラキエリは、超苺の愛にトロけていく。
自然と、当然のように、心の全てを、超苺にゆだねていく。
――結果、彼女の中にいる『セイバーリッチ』が、
超苺の『中』へと浸透していく。
本来であれば、そう簡単に手に入るものではない。
仮に、他の誰かが、強制的に、『セイバーリッチの因子』を、彼女の中から引きずり出そうとしても、その行動に対して『カウンター』が入るように、Tに調整されているから。
だが、Tは、超苺のように『包み込む』という手法に対するカウンターは用意していなかった。
『そんな特殊すぎる手法』をかましてくる相手がいるとは、さすがに想定していなかったから。
北風と太陽。
何もかもが、Tの想定外。
それが、超苺・ギガロブルー・カノープスという男。
――超苺はさらに強化されていく。
際限なく、限界なく、前へ、前へ、前へ。
そして、顕現する。
超苺の背中から、膨大な力を持つ『死神の剣翼』が。
圧倒的な存在感を放つ、
その『剣の翼』を目の当たりにしたクロートは、
ふかく嘆息しながら、
「超苺。お前のカラミティ・ジェントルは、いつ見ても、すさまじいな……『世界の半分を奪い取れる力』……すべての女を取り込み、平伏させ、自身のエネルギーに代えてしまうという異次元のスペシャル。お前は、純粋な知性のスペックだけでも破格だというのに、スペシャルまで破格とは……もし、真・神帝陛下が存在しなかったら、お前が、私たち全員を束ねる帝になっていただろうな。……あくまでも仮の話、論じる必要性皆無な、もしもの話だが――もし、陛下がおらず、かつ、頂点を決める方針が民主主義だった場合、私は、お前に票を投じているだろう。酒神や蝉原も破格の力をもっているが……お前には勝てない」