9908話 とある災厄のジェントルマン。
9908話 とある災厄のジェントルマン。
『真・神帝ヌル』が誇る配下・最高位幹部の中で、『頭のスペック』が最も低いのは、間違いなく超苺。
爆裂に優秀な他の面々と比べて、超苺は頭一つ抜けて愚鈍……なのだが、いつも、いつも、『たたき出す結果』だけを見ると、超苺が、常に頭一つ抜けている。
――それが、『超苺・ギガロブルー・カノープス』という男の真髄。
ちなみに、
クロートと超苺がのんびりと話している間、
Tは、どうにかして、ザラキエリの中から、
『セイバーリッチの因子』を回収しようと、
色々と、悩み、行動をとろうとしていたが、
――しかし、クロートと超苺の睨みがききすぎていて、
なかなか動くことが出来ずにいた。
特に警戒心が強いのが超苺。
彼は、Tが、ザラキエリに対し、ほんの少しでも動きを見せようとした瞬間、
――『小刻みに筋肉が痙攣しただけ』でも、
『視線がわずかに揺らいだだけ』でも、
まるで、その全てを釘付けにするかのように、
恐ろしく鋭い視線で、牽制してきていた。
(……スキがまったくない……完全なる堅牢。アレは崩せへん……今のワシでは……)
ギリっと奥歯をかみしめるT。
――超苺は、バカの変態だが、
『女性を守る』という点に関してだけは、
異次元の力を発揮する超越者。
観察眼どうこうは、ただの勘違いなのだが、しかし、『ザラキエリに近づこうとするたびに超苺が、破格の警戒心で牽制してくる』というのは、ただの事実。
『目の前の女性を守る』と決断したときの超苺のセンサーは、ありえないほどビンビンになる。
(……最悪や……超苺が、ここまで厄介な化け物やとは思ってなかった……これに関しては、完全にワシのミス……)
奥歯が軋む。
自身の過ちに怒りすら覚える。
(……な……何よりも先に『こいつ』を……超苺を、どうにかすべきやった……こいつの対策を怠ったワシの決定的な失態……ぐっ……)
警戒はしていた。
だが、結局のところは『ヌルの配下の一人』としての警戒しかしていなかった。
――その程度で制御できる相手ではなかった。
超苺は、Tの想像をはるかに超えた化け物だった。
――と、Tが、自分の想像力の甘さを嘆いていた裏で、
超苺が、
(さっきから、田中トウシが、ずっと、この子を狙っているな……まあ、中に、セイバーリッチの因子があるんだから、当然か……彼女を構成している要素の大半が、セイバーリッチっぽいから、回収されたら、たぶん、彼女の存在が消えるなぁ……それは……ダメだよなぁ……かわいい女の子と、セイバーリッチ……世界にとって、どっちが大事かと言えば……そりゃ、百ゼロで、かわいい女の子だよなぁ……)
心の中で、そうつぶやいてから、
そこで、超苺は、
「………………『カラミティ・ジェントル』起動。彼女を、俺の世界に避難させろ」
自分のスペシャルに命令する。
すると、ザラキエルの肉体が粒子状態になって、超苺の中へと注がれていった。
プライマル・プラチナスペシャル『カラミティ・ジェントル』。
その効果は、大きく分けて二つ。
1、超苺の『中』にある『特殊な世界』に、任意の女性を避難させることができる(超苺の『中』に避難した女性は、魂のみの状態となり、肉体的閉塞から解き放たれる。防御外殻としての肉体の役割は、強大な力を持つ超苺が担うため、精神的にも非常に安定した状態となる。ある意味で、もっとも『自由』な状態で、世界を他漂う)。
2、『超苺の世界に避難している女性』から信仰されることで、超苺のステータスが上昇する。