9907話 超苺の本質。
9907話 超苺の本質。
「……間違いない。『聖なる死神』の因子が隠されている……超苺、お前、よく見つけられたな……こんなもん、どうやったら自力で気づけるんだ?」
例えるなら、それは、『世界一難しい間違い探し』で、『ここに注目してください』というヒントがなければ、よほど優れた洞察力があっても、なかなか、見つけることはできない、極端に巧妙な欺瞞。
超苺は、クロートが発した『因子が隠されている』という言葉を受けて、
ようやく、自分も、そのことに気づいた。
(あ、本当だ……よぉく見たら……確かに……へぇ……隠し方、すげぇうまいな……これは分からんわ……)
「後学のために、本当に教えてほしいんだが? いったい、どうやって見破った?」
『なぁなぁのよいしょ』ではなく、『本気で教えて欲しい』という顔で超苺の顔を見るクロート。
ただ、超苺は、
(いや、俺は、女の子を見ていただけで、何一つとして見破ったりとかはしてないから、教えられることなんか何もないんだが……)
その感情を、丁寧な言葉にするのはダルかったので、
いつもどおり、
「………………たまたまだ」
と、簡素な言葉だけで事実を告げる。
しかし、いつだって、周囲は、彼の言葉を、そのまま受け取ったりはしない。
「たまたま、たまたまって……お前、いつも、それを言うが、こんなたまたまばかりが続くことがあってたまるか。いつだって、お前が真っ先に、敵の繊細な謀や、微小な違和感を察知するじゃないか。――いつも思っているが、お前の洞察力と観察眼は異質すぎる。――お前、どうせ、あれだろ? 推理小説とか読んでも楽しめないタチだろ。すぐに犯人が分かってしまうから」
(……洞察力とか観察眼とか、そんなもんは、一ミリもねぇよ。推理小説を読んで犯人が分かったことなんかないし……てか、そもそも、本じたい、あまり読まないし……俺は、女の子を遠目にチラ見して楽しんでいるだけの変態紳士なんだよ。俺が言う変態紳士は、『女の子に絶対に害を及ぼさないことを徹底している紳士的な変態』という凝り固まった底意地で、そこのスタンスに関しては誇りに思っているけど、それ以外で何か誇れるものとか一個もないよ。こんなこと、自分では、あんまり言いたくないけど、俺、お前らと比べたら、頭一つ抜けてバカなんだよ。基本、何も考えてねぇ、ただの変態なんだよ。あ、いや、変態紳士なんだよ)
と、クロートの買いかぶりに対し、反論したいことは山のようにある。
事実として、超苺は、基本、何も考えていない。
頭がいいか悪いかで言えば――普通に、けっこうな、ちゃんとした『おバカさん』である。
少なくとも、どっちの方が『頭がいいか』と言えば、確実にクロートの方が上。
洞察力とか観察眼という特殊スキルの領域においても、
間違いなくクロートの方が上。
『真・神帝ヌル』が誇る配下・最高位幹部の中で、
『頭のスペック』が最も低いのは、間違いなく超苺。
爆裂に優秀な他の面々と比べて、超苺は頭一つ抜けて愚鈍。
だが、いつも、いつも、
『たたき出す結果』だけを見ると、
超苺が、常に頭一つ抜けている。
――それが、『超苺・ギガロブルー・カノープス』という男の真髄。