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9906話 ダイナミック変態紳士。


 9906話 ダイナミック変態紳士。


 超苺は、


(あの子、かわいい。見た目は堕天使っぽいけど、中身は清純そう……いいよねぇ、服装と中身ですでにギャップ萌えを演出してくるとか、にくいよねぇ……あざといよねぇ……けど、そこがいいよねぇ……くすぐられるわぁ……やっぱ、女の子は、女の子ってだけで素晴らしいよねぇ)


 この空間にいる数少ない女の子をチラ見しているだけだった。


 いつだってそう。

 超苺にとって、世界の命運だの真理だの、

 そういうのは、心底、どうでもいい。

 そんなもの、彼にとっては、クソほどの価値もない。


 ――だが、そんな彼の心情など、当然理解できるはずがないTは、


(……『あいつ(超苺)』は、まずいっ! 下手に動かれる前に――)


 超苺が何か厄介なことをする前に、ザラキエリを取り込もうと、

 Tは、神速で、彼女との距離をつめた。

 そのまま、サクっと、彼女の中から、因子を取り出そうと、

 腹部に向かって右手を伸ばす。


 ――が、そのムーブを、



「………………究極超神化7」



 超苺は、とんでもない反応速度で対応してみせた。


 パーフェクトなカウンター。

 簡易版の7だろうと、ここまで完璧なムーブを決められると、さすがのTでも、余裕で巻き込まれてしまう。


 超苺は、ザラキエリの腹部に伸ばしたTの腕を、

 完璧にすくいあげると、そのまま、

 完璧な体術で、Tの体を、地面に向けてたたきつける。


「ぐっ!」


 反射の受け身で衝撃を防いだので、ダメージはほとんどない。

 すぐさま、体勢をたてなおすT。

 ザラキエリから『セイバーリッチの因子』を奪い取ろうとスキをうかがうが、

 しかし、超苺が、鉄壁のガードをしているため、


「……ぐ……うぅ……っ」


 ギリっと奥歯をかみしめること以外、何もできなかった。

 超苺の完璧な牽制。

 目線と体軸の据わり方がハンパない。


 どこから仕掛けても、確実に受けられる――そう判断したTは、

 その場から距離をとらざるをえなかった。


 ――そんなTをにらみつけたまま、超苺は、心の中で、


(なんだ、あいつ……急に、女の子になぐりかかるとか……情緒不安定か? ……突然のことすぎて、つい反射でさばいちゃった……)


 超苺は、Tの思惑に気づいていたりはしない。

 そんな『本物の有能さ』など持ち合わせていない。

 超苺は、基本、何も考えちゃいない。


 ――極めて、単純に、

 『女の子が殴られようとしていた』ゆえに『気づけば、勝手に体が動いていた』、

 という、ただ、それだけのダイナミック紳士な話でしかない。


「超苺、どうした? なぜ、その女を……その女が何か……」


 と、そこで、クロートも、


「……ん?」


 深く、深く、集中して、彼女の奥をさぐってみた。

 すると、



「……だいぶうっすらとしているが……まさか……『聖なる死神』か?」



 その問いかけに対し、

 超苺は、


(なに言ってんだ、あいつ? ……一ミリも分からんけど、なんか男前にシリアスな顔をしているから、とりあえず、俺も頷いておこうか。俺は空気が読める男の子なのだ。えっへん)


 肯定の頷き。

 それを見たクロートは、より深く集中して、

 ザラキエリの奥を覗き見る。

 その結果、


「……間違いない。『聖なる死神』のフラグメントが隠されている……超苺、お前、よく見つけられたな……こんなもん、どうやったら自力で気づけるんだ?」


 例えるなら、それは、『世界一難しい間違い探し』。

 『ここに注目してください』というヒントがなければ、

 よほど優れた洞察力があっても、

 なかなか、見つけることはできない、極端に巧妙な欺瞞。



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