44話 神の傑作アダム・クリムゾン。
44話 神の傑作アダム・クリムゾン。
(……俺のプロパティアイでも何も見えない……高次のフェイクオーラがかけられているのか、それとも、マジでただのブレスレットなのか……)
なんてことを思っていると、
「主上様」
いつのまにか、となりにアダムが立っていた。
ブレスレットに集中しすぎて、彼女の気配に気づかなかった。
「あぶねぇから、セーフティエリアにいろ」
「主上様の命令に反する気はありません。ただ……そのブレスレット……」
「これが、どうした?」
「もうしわけありませんが、少し貸していただけませんか?」
「……ん、んー……なんで?」
「そのブレスレット……妙な既視感がありまして」
「ほー、既視感ねぇ」
別に、アダムのことを疑っているわけではないのだが、
なにか、危うい予感がしたので、
「……んー……やめとけ。『俺の目でも見えない厄介な呪い』とかがかかっている可能性もゼロじゃねぇ。『存在値10000以下は触ったら死ぬ』とか、そういう最悪の事態も想定して――」
と、貸すのを拒絶したセン。
しかし、気付いた時には、
「ん?」
センの手の中から、ブレスレットは消えていた。
「え、いつ取った? どうやって……は? お、俺からモノを奪うなんてこと、お前に出来るワケないよな?」
いつのまにか、アダムの手の中にあったブレスレット。
アダムは、そのブレスレットをまじまじと見て、
「ああ、やはり……」
「質問に答えろよ」
「主上様……私はこれを知っております」
「シカトするねぇ。……まあいいや。で? それはなんだ?」
「これは……手錠……」
「……」
「私を縛る……手錠……」
気づけば、アダムの目から光が消えていた。
アダムは、ほとんど無意識レベルで、
そのブレスレットを自分の右手に装着した。
すると、
「……ぷはぁ……っ!!」
まるで、水中から顔を出したみたいに、
「すぅ、はぁ……すぅ、はぁ……」
何度も深呼吸をするアダム。
「……はぁぁ……」
数秒かけて呼吸をととのえると、
顎をグっと上げて、センを見つめ、
「解き放たれた……ようやく……」
そんなことをつぶやく彼女に、
センは、丁寧に『観察するような視線』を送り、
「それが手錠だってんなら、装着した今は、『解き放たれた』ってのとは真逆で、『拘束された』ってのが正解じゃね?」
と、至極まっとうなことを言う。
だが、そんな言葉はシカトして、
「私は、『神の傑作アダム・クリムゾン』。この世界を完全に破壊する者」
「えっと……これは……あれかな? ブレスレットに『意識を奪われてしまった』的なやつかな?」
と、状況を推測するセンに、
アダムは、
「勘違いするな、バカ者。私が――このアダム・クリムゾンこそが、この世界を終わらせる究極超邪神なのだ」
「……」
「ブレスレットは、あくまでも、私を覚醒させる道具にすぎない。……私は解き放たれた。言っておくが、もはや、シューリを殺してもムダだ。私はすでに目覚めてしまったのだから」
「シューリを殺す云々はどうでもいい。俺の中で、その選択肢だけは存在しないから。――そんなことより、お前はマジでアダムなのか?」
「ああ、そうだ。昨日、貴様には、あえて言わなかったが、私が、4日前に目を覚ました場所は、ここだ。目を覚ましたというか、4日前に、私は、扉の向こうからきた」




