9905話 超苺は頼りになりすぎる。
9905話 超苺は頼りになりすぎる。
(俺は、別に、特殊な能力があるわけでも、特に賢いわけでもないだろうが。……どいつもこいつも、勘違いしやがって……クソめんどくせぇ……けど、そういう誤解を解くために説明するのもめんどくせぇ……詰んでるなぁ、俺の人生……)
「超苺。お前ならどうにかなると思うから、頑張ってみてくれ」
「……」
超苺は、どうにか、
『無理だ』ということを伝えたかったが、
しかし、これ以上しゃべるのがダルかったので、
ほとんど無視に近い沈黙を貫いた。
その寡黙さを、クロートは、
『肯定の沈黙』『前向きに努力することを誓う決意』と捉え、
「さすが、頼りになる」
と、さらに、ワンランクほど、超苺に対する評価を上げる。
その鬱陶しい勘違いに慣れてしまっている超苺は、
(……ダルいなぁ……)
と、心の中でつぶやくばかり。
そんな二人を尻目に、
Tは、
(……アレが超苺か……確かに、すさまじい眼力……底知れない覇気を感じる……)
超苺は目つきが悪い。
たんに『そういう顔付き』というだけなのだが、
彼の瞳に『この世のすべてを射貫く鋭い眼光』を感じる者は多い。
彼の目は、基本、『風に吹かれるパンチラ』を追っているだけなのだが、
そんなこと、周囲の人間は知る由もない。
(クロートだけなら、どうとでもなったやろうけど……超苺もセットとなると……流石にキツいか……?)
そう感じたTは、さらに、追加の『切り札』を切ろうとした。
Tの切り札の一つ。
それは、配下であるザラキエリの存在。
ショデヒやガイリューの同僚である女性のバードマン、ザラキエリ。
実のところ、彼女は、エルメスと同じで、
『Tの力を解放するための因子』を含んでいる。
具体的に言えば、彼女の中には『聖なる死神セイバーリッチ』の因子が隠されている。
もしもの時は、彼女から、その因子を取り出して、自分のオプションにするために。
セイバーリッチの力を取り込み、
『死神の剣翼』を発動させることが出来れば、
この二人を同時に相手取ってもどうにかなる。
――そう判断し、実行に移そうかとした、
が、しかし、
そこで、
Tは、気付く。
超苺の目が、ひそかに、ザラキエリを捉えていること。
(まさか……気づいとるんか?! いや、ありえん……っ! どんだけ丁寧に隠したと思っとるんや……)
『こういう時のため』に用意していた切り札なので、
敵にバレては元も子もない。
だから、エルメスとは比べ物にならないぐらい、
丁寧に、慎重に、セイバーリッチの因子を、
ザラキエリの中に仕込んだ。
だから、バレるわけがなかった。
しかし、
(……狩人のような、あの目……完全に気づいとる……っ)
超苺は、ザラキエリの一挙手一投足をにらみつけていた。
完全に気づいている――と、
Tは誤解しているが、
実のところ、超苺は、
(あの子、かわいい。見た目は堕天使っぽいけど、中身は清純そう……いいよねぇ、服装と中身ですでにギャップ萌えを演出してくるとか、にくいよねぇ……あざといよねぇ……けど、そこがいいよねぇ……くすぐられるわぁ……やっぱ、女の子は、女の子ってだけで素晴らしいよねぇ)