9897話 尊き神の眷属。
9897話 尊き神の眷属。
(……な、なんだ? 雰囲気が変わった……明らかに、ショデヒの波動ではない……ショデヒごときに、それだけの圧力は出せない……この凶悪な戦闘力……絶対にショデヒのものではない……)
バーチャは、『異常事態に困惑するだけの無能』で終わらない。
すぐさま、脳をフル回転させて、『現状を構成できる可能性』を模索する。
その結果、いくつかの推測がヒットする。
その中で、もっとも高い可能性は、
(……私と同等か、それ以上の化け物による、マリオネットゲイザー……)
『ショデヒが高次者に操られている』――そう考えるとシックリくる。
というより、それ以外で、現状を整えるのは難しい。
「誰だ……貴様は誰だ? 誰が、ショデヒを操っている?」
そんなバーチャの問いに、ショデヒは、
「尊き神の眷属」
「……また、それか」
バーチャは、一度、ウザそうな顔をしてから、
「ショデヒをカナリアにして、私を見定めようとしているのか……一ミリも尊い行動ではないが、極めて合理的な慎重極まりない一手……悪くはない」
と、相手のムーブを、高みから称賛するバーチャ。
そういう、上位者のアクションを噛ますことで、どうにか、自分の心を平静に保つ。
そんな、上位者としての威風を保とうとしているバーチャを尻目に、
ショデヒ――『クロート』は、
「はぁあああああ……」
全身のオーラと魔力を底上げしていく。
良質に、徹底的に、丁寧に、限界を遥かに超えて、
その結果、
「――超・神・化……プラチナムっ!!」
ショデヒは『次のステージ』に届く。
決して、完全な状態ではないのだが、
しかし、先ほどとは別の次元に到る。
「……はぁ……はぁ……」
次のステージ『超神化プラチナム』に至ったショデヒ。
そんなショデヒを操っているクロートは、
両手を見つめながら、
「……今の『ショデヒ』では、完全なる超神化は、さすがに無理か……」
ボソっとそうつぶやいてから、
「……まあいい。バーチャを飛ばすだけなら、超神化プラチナムでも問題はない」
ギロリと、バーチャを強い目で睨みつける。
その胆力は、ショデヒに出せるものではない。
バーチャは、
「いいかげん、名前を名乗れ、不調法者」
当たり前の礼儀を強制する。
『ショデヒ(クロート)』は、数秒だけ間をとってから、
「……バリアブル・ミシャンドラ・クロート」
(ミシャンドラ? 確か、センエースの配下にも、そんなのが――)
などと考えていると、
そこで、『ショデヒ(クロート)』は、
「……バーチャ・ルカーノ・ロッキィ。ウォーミングアップに付き合ってくれたこと、感謝する。お前は、いつだって、コマとしては微妙だが、かませ犬としては、非常に優秀」
「……ぁあ?」
上位者としての体裁が消え去る。
純粋な憤怒が、バーチャを、ただのチンピラに変える。
「……は、ははは……ゴミがぁ……」
吐き捨てた直後、
バーチャは、疾走する。
次元を切り裂くほどの勢いで、
飢えた獣を置き去りにするテンションで、
問答無用の殺戮を開始しようと、
『ショデヒ(クロート)』に襲い掛かる。
豪速の特攻。
素のショデヒでは全く対処できないスピード。
しかし、クロートの制御下にある今、『ショデヒの目にうつるバーチャの速度』は、『そこそこ』の領域にとどまる。