9895話 超神の相手が出来る器はない。
9895話 超神の相手が出来る器はない。
「残念ながら、私の判定勝ちでしょうね」
数分をかけた殴り合の後に、無傷のショデヒが、息を切らしているバーチャに、そう言い放った。
認めざるをえない。バーチャは、後衛相手に、前衛の勝負を挑まれて判定負けした。
これは、真正面の屈辱。度し難い恥。
――ただ、ここまで、ハッキリとした恥をかいたことで、
バーチャの中で、『震えるほどの恥』は『さらに膨らんだ欲望』へと変換された。
「……常軌を逸した神器だ……教えろ……どこで手に入れた?」
先ほどの『よこせ』と叫んだ『感情任せの命令』とは違い、
今は、とことん冷静に、神器の出所を探っているバーチャ。
そんな彼に、ショデヒは、
「尊き神の従属神様から下賜されました」
「……尊き神……ねぇ」
ショデヒの言葉を、いったん、自分の中で咀嚼してから、
(ティー・ヒャクヨンと同等か、もしくは、それ以上の化け物が……どこかにいる……そう判断すべきか……)
一度、ギリっと奥歯をかみしめるバーチャ。
(私を超える者が、まだまだいる……ふざけた話だ……ショデヒに力を与えた者が、センエースであれば、私の上にいる者は、二柱に収まるが、センエース以外にもいた場合……厄介だな……)
などと、考えているバーチャ。
そこで、バーチャは、胸の前で両手をあわせる。
祈っているわけではない。
バーチャの中で、『一番上にいる神』は自分。
それは、絶対にゆるぎない。
たとえ、どれだけの絶望を前にしたとしても、
たとえ、どれだけの高みを見せられたとしても、
バーチャは、自分の中にこそ『最強』の器があると信じ切ることができる。
それも、才能。
強大なギフト。
「――超神化」
高みに到るバーチャ。
ここまでは、出力3億程度でショデヒの相手をしていたが、
ここからは、全力でいく。
その値、500億。
今のバーチャに出せる究極。
「とりあえず、その神器はもらう。ショデヒ、貴様ごときには扱いきれないし、純粋にもったいない。それは、私の手の中にあってこそ輝く」
本気で強奪する気になったバーチャを見て、
ショデヒは、額に脂汗を浮かべる。
バーチャの圧力を前にして、精神がどんどん削られていくのを感じた。
(これが、存在値500億……ビリビリと、腹の奥底に響く……)
脂汗に冷や汗……体の至る箇所から、全身全霊の警告が発せられている。
「オッケー、タナカッチ! 全部まかせますから、出来る限り、どうにかしてください!」
先ほどまでは、まだ、主導権を得ていたショデヒだが、
しかし、ここからは、完全に丸投げすることに決めた。
『タナカッチの意のままに動く人形になる』という決断。
それは、ぶっちゃけ、『かなり情けない選択』だったが、
しかし、最良かつ最善である事は、疑いようのない事実。
丸投げのオートモードに移行したショデヒは、
今のショデヒに可能な『完全なる最善』を尽くす。
それでも、
「――素晴らしいぞ、ショデヒ。存在値10億ぐらいまでなら、今の貴様でも対応できそうじゃないか」