9889話 ショデノス。
9889話 ショデノス。
「そ、その異質な変身は強大! 認める! しかし、私の国にも、同じ変身技を使える者が存在している! はやまるな!」
必死になって、『私を殺すな』と叫び続けるショデヒ。
そんな彼に、クロートは、
「もう、おしゃべりはいい」
そう言い捨ててから、
瞬間移動で間を殺すと、
ホアノスの灰玉を、ショデヒの心臓に向かってぶちこむ。
「ぐべはぁっ!」
胸部を貫かれたショデヒは、己の死に、明確なシルエットを感じる。
(……こ、こんな……ところで……死ぬのか……いやだ……なんで……くそ……)
そんな彼の憤りを肌で感じたクロートは、
淡々とした口調で、
「ショデヒ。お前の魂は、そこそこ有能。今後は私が有意義に運用してやる」
そう言いながら、
ホアノスの灰玉と、ショデヒの心臓をグチャグチャにミックスさせていく。
「――はじけて、まざれ――」
クロートのテンプレな命令に、灰と心臓が素直に従う。
混ざり合った二つの邪悪。
重なり合って、不自由になっていく。
――ほんの数秒後、さきほどまでグチャグチャだったとは思えないほど、
精緻に整えられた魂が、そこにはあった。
そんな、新しい命である『彼』を見ながら、
クロートは、
「……ショデヒとホアノスが合体して、ショデノス……と、テンプレよろしく言いきりたいところだが、実際のところは、そうじゃない。合体ではなく、同化と言った方が正しい。ショデヒという、そこそこ優秀な個体に、ホアノスという、そこそこ有能な『パワーアップのきっかけ』を与えただけ。つまり、貴様は、ショデノスではなく、ショデヒ。私からすれば微々たる差だが、貴様からすれば大きな問題だろう」
あくまでも、たんたんと説明しつつ、
「あと、スパイスとして、真・神帝陛下に対する忠誠心を植え付けさせてもらった。今後は、バーチャやトウシのような雑魚ではなく、本物の神に尽くせ」
そんなクロートの言葉を聞きながら、
ショデヒは、穏やかな顔で、
「真・神帝陛下……偉大なる命の王……ぉ、おお……ぉおおお……なんと、素晴らしい……バーチャや聖主など、目ではない……格の違う本物の高み……すべての世界を飲み干した、完璧なる神の王……」
「ショデヒ。貴様は、偉大なる王の配下になったのだ。今は、末席の末席だが、貴様のポテンシャルを考えれば、幹部級にまでのし上がれる可能性はある。命を賭して陛下に尽くせ。そうすれば、栄光の未来をつかみ取れる」
「……可能性を与えてくださったこと、心から感謝を」
そう言って、片膝をつき、頭を垂れるショデヒ。
今、ショデヒは、バーチャを初めて知った時以上の、深い感動に包まれていた。
基本的に、『子分体質』であるショデヒは、
どこかで、『自分と同系統の邪悪な親分』を求めていた。
これまでは、エルメスや、聖主など、
ショデヒからすれば、『ものたりない親分』ばかりで、消化不良だった。
バーチャが『最強』だったら、なかなか悪くなかったのだが、
彼は、実際のところ、ヘタレの小物だった。
少なくとも、ショデヒが求める『理想の親分』ではなかった。