9884話 ミシャンドラモデルと、薬宮シリーズ。
9884話 ミシャンドラモデルと、薬宮シリーズ。
「一般人の中だと、そこそこ高い存在値を持ち、激昂で存在値を上げるスペシャルを持つ、か……感情によりバフがかかるスペシャルなど、さほどレアでもないし、上昇率もゴミ……魔力とオーラの練度もゴミ……精神の邪悪さだけは、そこそこ上質で、犬として使うのも悪くはないレベルだが……『ミシャンドラ』に対する害意を、私が放置するわけにはいかないのでね」
そう言いながら、
イケメンは、ホアノスの首をガシっと掴む。
ギリギリィイイと、ゆっくり締め上げていくと、
ホアノスは、
「うぐっ、ぎぃい! は、離せぇえ!」
『死』が意識をかすめて、さらに、火事場のクソ力が湧いてでる。
怒りの感情に生存本能をかけたブースト。
人生最大級のパワーを出すものの、
しかし、相手が悪すぎた。
と、そこで、イケメンは、
「俺は、バリアブル・ミシャンドラ・クロートと言う」
唐突に自己紹介をはじめた。
イケメンの彼――クロートは、
「――『真・神帝陛下』のおかげで、『大半』を取り戻せたから、名前の記憶も戻っている……だが、バリアブルの方にも愛着が出てきたから、どっちも名乗っているというわけだ。『バリアブルの名前だったから、真・神帝陛下にお会いすることが出来た』――というわけでもないのだが、まあ、ゲン担ぎみたいなものだな。少なくとも、なにか利益的な意味があって、この名前を大事にしたいというわけではない」
などと、まったく意味の分からないことを口走る。
ホアノスに理解させる気など、クロートにもないようで、
クロートは、一切の配慮なく続けて、
ホアノスに、
「貴様が壊したいと渇望している『ミシャンド/ラ』は、私という『最高位悪魔の器』を媒体にして作成された薬宮シリーズ。お前が欲望を抱いたのは、『私の部分』ではなく、『薬宮シリーズの部分』だが……しかし、『世界』は『ミシャンドラ』に対する不快感だと結論づけた。世界というのは、『循環』のために『悪意』を許容するくせに『ラインを超えるのは許さない』という、きわだってメンヘラな気質を持つ。――そのおかげで、私は、ここにくることができた。蝉原と違い、制限の大半が無い状態……くく……ありがたい話だよ、本当に」
そう言いながら、ホアノスの首を、さらに締め上げていく。
ホアノスの顔がだんだん青くなって、しゃべることもできなくなってきた。
「お前らのおかげで、私は、真・神帝陛下に尽くせる。その礼として、比較的、楽に殺してやる」
などと言いながら、しかし、一気に首をへし折ることなく、
ゆっくり、ゆっくりと締め上げていく。
まだ、ギリギリ、酸素を取り込めているが、もうそろそろ呼吸ができなくなってくるだろう。
それが理解できたホアノスは、恐怖心から、
最後の抵抗をこころみる。
全力であがき、もがき、どうにか、クロートの手から離れようとするのだが、
しかし、クロートの筋力が異次元すぎて、抵抗が、まったく意味をなさない。
ホアノスは、白目になる。
頭が動かなくなってくる。
ホアノスは、最後に、
「たす……けて……ごめん……なさい……」