9882話 業火を縫い合わせたような燕尾服。
9882話 業火を縫い合わせたような燕尾服。
「……ん?」
反射的に、体が迎撃態勢をとった。ホアノスは、最高位の議員。
この世界で『高い地位』を得ようとすれば、『優れた存在値』を誇っていることは当然。
東大理出官僚の偏差値がバカ高いのと同じ。
優れた存在値を持つホアノスは、
この『謎の状況』に対し、即座に対応しようと、
反射レベルでオーラと魔力をひねり上げる。
ショデヒも同じ。
『なにか分からないが、ヤバそうだ』と意識が認識するとほぼ同時、
魔力を練り上げて、迎撃できるようにポジションをセットする。
二人の目線が次元の亀裂に釘付けになる。
亀裂が入ってから、およそ5秒が経過したところで、
その次元の裂け目から、
『彼』はきた。
「お、いけたな……なんでだ?」
業火を縫い合わせたような燕尾服をまとったイケメン。
『彼』は、眼球を動かすだけで、周囲を見渡して、
心の中で、
(……蝉原がテラスから『8のカケラ』を奪い取って、真・神帝陛下の底力が上がったおかげか? いや、違うな。それも、もちろん関係しているが……それ以外にも要因がある……)
そこで、『この時空に残されていたログ』を確認するイケメン。
数秒で、チェックを終えると、ニヤリと笑い、
(ああ、なるほど。『ミシャンドラ』に対するゲスな欲望に対する世界の不快感が、私をここに導いたか……くく……感謝するぞ、カスども。おかげで、この世界に干渉することができた)
『この世界』に、『彼ら』が干渉するためには、絶対的な『前提』が必要になってくる。
それは、ある意味で、『必然性』と言ってもいい。
なんでもいいのだが、とにかく、『アリア・ギアス』的に、
『何か』を積まなければ、この世界に干渉することは叶わない。
(この世界を恐怖と絶望で覆いつくせば、真・神帝陛下は、また一歩、究極超神化8に近づく。濃厚な絶望を演出するために、できれば、超苺あたりもつれてきたかったところだが、あいつの『前提』を積むのは難しそうだな。超苺のゲームメイクは完璧だから、いてくれると、非常に助かるんだが……てか、あいつなら、『前提をシカトして、こちらに滞在する』のも、どうにか、できるんじゃないか? あいつがその気になれば、『縛り』を突破する方法ぐらい見つけられる気がする……んー……まあ、その辺はおいおい考えるか。まずは、目の前のカス共を処理しないとな)
などと、心の中で、ブツブツつぶやいているイケメン。
そんな彼の動きを真剣に観察しているホアノスとショデヒ。
ショデヒは、顔に冷や汗をうかばせながら、心の中で、
(……ま、まずいな……私のセブンスアイでも何も見えない……『とんでもない練度のフェイクオーラ』を『纏っているだけ』だったら、さほど問題ではないが)
『フェイクオーラだけ異常に高性能の雑魚』というのもたまにいる。
『そこまで珍しくはない』という頻度で存在しているから、
ショデヒは、『どっちだろうか?』と悩んでしまう。
(……もし、バーチャや聖主級の化け物……となると……逃げた方がいいが、もし、そのレベルだった場合、実際のところ、逃げることも難しいレベル……さて、どうしたものか……)