2話 真・神帝陛下。
2話 真・神帝陛下。
もし、センテラスを救うために、センエースを殺す必要があるとしたら、ザンクは、秒の迷いすらなく、即座にセンエースを殺して、センテラスを救い出すだろう。
(――蝉原を確実に殺し、テラスを完全に奪い返すためには……『センエース』の力だけでは厳しい気がする……もっと、もっと、多角的に、貪欲に求めんと、話にならん……)
ザンクの中に刻まれた蝉原の恐怖。
それは、とんでもなく重たい絶望として、
今も、ザンクの心をかきみだしている。
(幸い、ソンキーのシャドーは、まだ召喚できるっぽい……)
コスモゾーンを漁った結果、
『ソンキー』は『奪われた』というワケではなかった。
ザンクの力が足りないから維持できなくなっただけで、
力を取り戻せば、また、再度、召喚することが可能。
(センエースとソンキーを合体させて、またスーパーセンキーにした上で、さらに質を高めたザンクさんというCPUを埋め込めば……蝉原に対する対抗馬になれんこともない)
使えるものは何でも使うという覚悟を決めているザンク。
魔王も勇者も邪神も、何もかも全部使って蝉原を叩こうとしている――が、
(――蝉原相手に、まともに使えそうなんは、センエースとソンキーぐらいやろうな……他は、ゴミすぎて、一ミリも相手になる気がせん……)
そこまで考えたところで、
ザンクは、
(蝉原だけでも厄介やのに、その上には、もう一つ上の神がおるらしいからのう……そこまで含めて対処を考える必要がある)
蝉原の上司――神の王『真・神帝陛下』。
どういう存在か、今のところは、一切不明だが、
(……『存在する』というんが事実であれば、非常に面倒くさい相手であることは疑いようがないやろうな……勘弁してほしいわ……蝉原というラスボスの段階で、相当に鬱陶しいのに、裏ボスまで 完備とは……)
ため息をつくザンク。
面倒事の重さに辟易する。
(しかし……このザンクさんが、まさか、『お姫様を救うため、必死に強くなって、ラスボスと裏ボスを倒す』――なんていう、そんな、自由度もクソもない、一本道の定型文みたいな人生を過ごすハメになるとはなぁ……ほんま、人生ってのは、爆裂に奇想天外やでぇ。自分の人生が、こんなにもしょうもないテンプレ化するとは夢にも思っていなかったな)
などと、心の中で、そんな愚痴をこぼしつつも、
しかし、その人生を放棄する気はサラサラなさそうなザンク。
――誰よりも何よりも『自由』を尊んできた男は、
今日から、誰よりも『不自由な人生』を歩んでいく。
9871話 1000億年の旅路。
――ザンクが最初の決意をかためてから、
『実質時間』が、『1000億年』ほど経過した。
おそろしく長い時間を旅してきた敗北者センエースは、
血走ったガン決まりの目で、世界を――『ラスボス』をにらみつける。
心身ともに疲弊しきって、
魂も魄もズタズタになって、
それでも、
センは、
「1000億年頑張って……それでも……ダメだった……それでも……当たり前のように……」
奥歯を食いしばって、
ぶっ壊れそうな命を背負い直して、
「1001億年目をめざしてあがく……この覚悟だけは……1000兆年になろうが……1000不可思議年になろうが変わらねぇ……」