表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/1228

40話 それでも……


 40話 それでも……


 3億年頑張って、存在値を200億まで引き上げた。

 それは誰にもマネできない偉業。

 それは確か――なのだが、


(明日、また1億年を積んだとしても、この調子だと、300億が精々……よくて500億……ダメだ……それじゃ、届かない……)


 だんだんと、自分の『限界』みたいなものが見えてきた。

 ずっと『100倍ずつ強くなる』なんて不可能。

 どこかで頭打ちは必ずくる。

 すでに、センは、それを感じている。


 よくて500億などと言っているが、実際のところ、あと1億年程度だと、250億を超えることも厳しいんじゃないか、というのが、彼の本音。


(……『強くなる速度』は目に見えて停滞している。スランプとかじゃねぇ。たぶん、これは、単純なる『命の壁』だ……)


 『存在値999』の時に感じていたような、

 『ここから先』にいくためには『高次のブレイクスルーが不可欠』と痛感する大きな壁。


(……この壁を超えるためには、たぶん『10億年』ぐらいはかかる……いや、10億年でも届くかどうか……)


 へたをしたら、100億年かけても届かないんじゃないだろうか、

 なんて、そんなことまで思ってしまうほど、

 『命の壁』は高くて厚い。


(レベルさえ……上がってくれれば……)


 閉塞状態に陥ったことで、センは、『自分の無能ぶり』に対して『呪詛じゅそ』を吐く。


(くそったれ……なんで、俺はレベルが、まったく上がらねぇんだ……)


 レベルは、『存在値の下地』である。

 神の次元に達して、存在値が爆上がりすればするほどに、『レベルの価値』はむしろ跳ね上がる。


 『レベルが上がらない』という縛りは、

 強くなればなるほど、より重たくのしかかってくる。



(無能、無能、無能……こんなクソみたいな無能に産みやがって……)



 生まれてからずっと、『レベルが上がらなくとも、他でカバーすればいい』と、つよがって生きてきたが、さすがに、我慢できなくなって、センは、あの『クソ親』に対して文句を口にした。


 『虐待された件』に関しては、完璧な復讐によって『心にフタ』をすることができたが、

 それ以外の部分は、まだまだ、むき出しのまま。


(悪いのは俺じゃねぇ……あのクソ夫婦だ……クソみたいな種で子づくりしやがって……クソがぁ……)


 3歳になるまでは、どんなに辛くても、心の中であろうと、『そんなこと』は口にしなかった。

 ずっと、ずっと、耐え忍んで、黙って、努力だけを積んできた。

 『元気に産んでくれてありがとう』と虚勢を張りながら、己の無能と向き合ってきた。


 けど、極限状態が限界にきて、センの心は崩壊する。


(どんだけ頑張っても、全然、数値が伸びねぇ……それは、至極単純な話、才能がないからだ……無能で生まれたから……才能さえあれば……資質が高ければ……くそが、くそが、くそがぁ……っ)


 ひたすら心の中で、文句を吐き散らかしてから、



(そ、それでも……)



 センは、


(それでも……『降りてやらねぇ』と……『死んでも折れてやらねぇ』と叫び続ける勇気を……)


 そんな勇気を求め続けるセン。

 最後の最後まで、『それでも』と叫び続けたいと願い続ける。


(ぶっこわれて、腐って、ゆがんで……それでもなくさなかったすべてを……あつめて……)


 みじめな弱音を飲み込んで、

 おのれの不運を飲み干して、


(最後の最後まで……あがきつづけてやる……)


 センは、涙を我慢して前を見る。


 すると、そこで、




「……大丈夫ですか、主上様……」




 アダムが声をかけてきた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
センの苦しみと葛藤が胸に響きます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ