53話 次の田中ザンクはきっとうまくやるでしょう。ZAP、ZAP、ZAP。
53話 次の田中ザンクはきっとうまくやるでしょう。ZAP、ZAP、ZAP。
「これ、さっきもやったよね? 『君自身の武』で、この俺をどうにかするのは絶対に無理だよ。せめて、イマジナリィ・マリオネットゲイザーで、閃くんか、ソンキーの武をコピーしなよ。破滅モード状態の今なら、そのぐらい、できるよね?」
「必要ない! おどれごときを殺すぐらい、ザンクさんだけで十分!」
蝉原は、
「さすがに、何度も付き合わないよ」
最後にそう言ってから、
ほんの少しだけ右腕に力を込めて、
ザンクとの距離をゼロにすると、
「君相手に殺神拳は必要ない」
軽い口調でそう言いながら、
ザンクの心臓を、右腕で貫いた。
「ごふ……っ」
大量の血を吐き出すザンク。
そんなザンクの顔面に左手をあてて、
「異次元砲も必要ない。君ごときには、何も必要ない。その気になれば、鼻息だけでも殺せるけれど、そんな楽しい殺し方をする価値もない。ただ風に吹かれるように死ねばいい」
ただの魔力の波動を放つ。
それは、なんの魔法でもない。
ただ、膨らませた魔力をぶつけただけ。
同ランクが相手だと、かすり傷にもならない攻撃だが、
数値差がハンパではないため、
ザンクの頭は跡形も残らず吹っ飛んでしまった。
あっさりとしたものだった。
ほとんど抵抗できずに、サクっと殺されてしまったザンク。
存在値1兆はとんでもない数字だが、
しかし、今の蝉原の前では、そこらの虫ケラと大差ない。
ザンクが『完全に死んだ』のを確認すると、
「――最後に、ほんのちょっとだけ、『なかなか面白そうなハッタリ』を決め込んでみせたけど……結局のところは、それだけだったみたいだね。大仰なのは口ばっかりで、中身の方は至極薄っぺらい。そんな君らしい、チンケな最後だったねぇ。くくく」
鼻で笑ってから、
蝉原は、ザンクのカケラを回収して、
「次の田中ザンクはきっとうまくやるでしょう」
などと、小ネタを口にしてから、
しかし、もう一度鼻で笑ってから、首を横に振り、
「……いや、結果は、同じだろうな。運命力的な視点でみれば、1002号が1001号よりも優れている可能性は、かなり低い。次の田中ザンクも、ちょっとした歯車を無難にこなして終わりだろう」
そう言いながら、
指をパチンと鳴らすと、
目の前に、淡く瞬くジオメトリが出現。
その歪んだ幾何学に、
蝉原は手を突っ込んだ。
そして、引きずり出す。
1002番目のザンク・ザンク・レボリューション。
「……」
1002号は、完全なる昏睡状態で、
引きずり出されて、地面にドスンとたたきつけられても、
まったく起きる気配がない。
そんな1002号に、
蝉原は、先ほど回収したばかりの『1001号のカケラ(経験値)』を注ぎ込む。
すると、
「……ん……」
1002号は、パチっと目を開けて、
注意深く、周囲を確認する。
そんな1002号に、蝉原は、
「やあ、田中ザンクくん。おはよう」
「……え、誰? てか、ここどこ?」
「俺は神様だよ。君をここに召喚した神様」
「……神様っすか。ほー……ザンクさんの目には、中高生のヤンキーにしか見えんのやけど?」




