38話 必死の時間稼ぎは可能性の夢を見るか。
38話 必死の時間稼ぎは可能性の夢を見るか。
「ん? もしかして、君も異次元砲を撃つ気かな? その一手は、さすがに悪手だと思うけれど?」
「ちゃうちゃう。これは、『タイム』のサインや。異次元砲を撃つんは、ちょっと待ってくれ」
「……君のお願いを聞く道理はないんだけど?」
「無理を通せば、道理は引っ込むもんや」
「そういう反社的な発言は、むしろ、俺の専売特許だと思うのだけれど?」
「おどれがどう思うかは知ったこっちゃない」
と、たがいに、ファントムな言葉で牽制しあう。
その果てに、蝉原は、
「ただの言葉遊びで時間を稼いで、それでどうしたいのかな? 本当に、ただの命乞いなら、相手にするのがバカらしいから殺すけど?」
「……命乞い? 大いなる田中家の異端児であるザンクさんが、おどれごときに? 寝言なら、もっとおもろい事言うてくれ。起きとる時も、寝とる時も、同じぐらいつまらんって……おどれに、いったい、何の価値があんねん」
「……挑発にしてはお粗末だねぇ。あえて、ぬるい一手を放つことで、自分自身を小バカにさせたいという意識が透けて見える。……どうやら、本当に、『何か』を求めて、時間を稼いでいるっぽいね……面白いな。からっぽの君に何が出来るのか、ちょっと見てみたい。最後に30秒だけ待つよ。頑張って、何かしてみてくれ」
「30秒? あかんな。あと5分は、おしゃべりに付き合ってほしいな」
「君との『かったるいおしゃべり』に、これ以上付き合うのは、さすがに嫌だね。30秒だ。最後の30秒に全力を賭してくれ」
そんな蝉原の発言に、ザンクは、
「せっかちな兄さんやなぁ……早漏は嫌われるんやで、知らんけど」
「遅漏よりはマシなんだよ。女は、セックスそのものよりも、『激しく求められる』という、その情動の爆発こそを尊ぶ」
「――『俺は女を知ってますアピール』ほど、ダサいもんはないな」
「童貞アピールよりはマシだと思うけどねぇ。ちなみに、残り11秒だけど、その短時間で何かを成せそうかい?」
「……ああ。めちゃめちゃしんどかったけど……必死こいて、頑張ったら、どうにか間に合ったわ」
ザンクは、笑顔を浮かべてから、
目を閉じて、精神を集中させる。
そして、
「……プラチナァアア……スペシャルゥウウウゥ……っ!」
ザンクの中で、
可能性の花が咲く。
それを見た蝉原は、
「プラチナスペシャルの覚醒ねぇ……うーん、なんだか、ハッタリくさいねぇ……」
ザンクの成長を観察しながら、
「いや、でもまあ、ハッタリを決め込むなら、せめて、プライマルを騙るかな? プラスですら届かなかったのに、いまさら、ただのプラチナが目覚めたところでどうなるって感じだしねぇ」
感想を口にしてから、
「それで? 君に目覚めたプラチナとは? どうせだから、暴露を積む時間もあげるよ」
「――『マフツノカガミ』や『天照大鏡』は、テラスが軸にならな使えんスペシャル。ザンクさんだけやったら、どっちも使えん。メモリ不足ってやつやな」
「そうだね。それだけの高位スペシャルを使える器は、今の君にはない」