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30話 センテラスは変態。すごい変態。


 30話 センテラスは変態。すごい変態。


 右手に魔力を込める蝉原。

 その途中で、


「……ん? はは……閃くんが『やめろ』って言っているよ。君がショック死することを恐れているみたいだ。こういう時、いつも思うよ。『自分はいいのかよ』ってさ。ははは」


 楽しそうに笑ってから、

 ザンクに、


「どうする、田中ザンク。君がどうしてもイヤだというのなら、やめておいてあげてもいいよ」


 そんな蝉原の言葉に対し、

 ザンクは、強い怒りを覚えた。


 この怒りが、何に起因するのか、

 頭のいいザンクは、それを、綺麗に書き表すことができる。

 感情が中心の話なので、頭が回らなくても、そのぐらいは分かる。


 ・蝉原にナメられたのがイラつく。

 ・テラスの過保護にイラつく。

 ・ずっと守られてばかりの自分にイラつく。

 ・禁止魔カードとかいう、ふざけたチートにイラつく。

 ・あっさりと力を奪われた究極超神化8のショボさにイラつく。


 ――いくらでも思いつく。

 ただ、どれも、表層的な理由でしかなく、

 本当の本当の意味で、自分が、なぜ、ここまで深い怒りを抱えているのか、

 それを、ザンクは理解していない。


 『だから』というわけでもないことは、

 確定的に明らかなのだけれど、



「……見せろ……」



 ザンクは、強い目で、そう言い放つ。


 この『愚かな決断』に至った理由は純粋。

 決して『蝉原に煽られたから』ではなく、

 自分自身でも、知る義務があると思った。


 だから、強い目で蝉原を睨み、

 いつもとは違う強い口調で『見せろ』と命令した。


 本来であれば、ザンクごときに命令されたということに怒りを覚えるはずだが、しかし、今の蝉原は、黒い笑みを浮かべて、


「……君が望むのなら、仕方がない」


 怒りを抱くどころか、むしろ、喜んで、ザンクの命令に従う。


 その結果、




「――ぎゃぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」




 『ほんのわずか』に『口を開く』のも『億劫』なはずなのに、

 悲鳴を抑えることができなかった。


 体が引きちぎれるかと思った。

 傷口に毒ナイフを押し込まれてグリグリされたり、

 高圧の電流を絶え間なく流されたり、

 全身の急所や局部を徹底的に攻められたり、

 ――そんな、『破格の痛み』とも比べものにならない、

 精神と肉体の『奥の奥』をえぐりとられるような、

 ありえない量の苦痛と絶望の中に沈むザンク。


 ――ほんの数秒で、その地獄は終了した。

 蝉原が、ザンクの体から手を離したから。

 おかげで、壊れずに済んだ。

 もう、あと数秒、あの地獄が続いていたら、確実に心が砕け散っていた。


 ――『手を離してくれて、ありがとう』、

 と、蝉原に対して、心底から感謝の念が沸き上がるほどに、

 先ほどの『数秒の地獄』は、えげつなかった。


「……バカ……か……」


 絶望と苦痛を終えて、安堵の中にいるとき、

 ふと、ザンクの頭を駆け巡ったのは、

 『その痛みに、さっきからずっと、何も言わずに耐えているテラス』の顔。


 だから、


「なんで……耐えられる……なんで……そんな状態で……俺に……俺なんかの痛みに……寄りそうことが……できる……へ……変態……」


 彼女の狂気に、もはや、恐怖を覚えた。


 『狂っている』としか思えない。

 もはや、精神が、人間の領域にない。


 イカれている。

 壊れている。

 彼女は異常者。


 ザンクが震えていると、

 そこで、テラスが、


(……あんたは、田中トウシに匹敵する器……もしかしたら……田中トウシ以上になれるかもしれない可能性……そう感じた、私の予感を信じてみたくなった……自分のワガママを貫いた……それだけ……)



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