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24話 プラス。


 24話 プラス。


 すべてを受け止めたザンクは、

 自分の中に芽生えた新たなる可能性を使って、

 もっと、もっと、高く飛ぶために頭を回転させる。


「……アホほど開いていく……センテラス……お前の可能性は、ほんまにエグいな」


 実際のところ、『ザンク自身の資質』は、そこまで高くない。

 けれど、『器』としての適性は非常に高かった。


 ザンクの中で、センテラスが加速していく。


「お前ほどの女に認めてもらえた……だから、ザンクさんは前に進める」


 純粋な話だった。

 『トウシと同等』と言ってもらえたことが、ただただ、うれしかった。

 『もともと膨らんでいた感情』に水をもらった。

 だから、急成長して暴走した。


 ――もはや、言うまでもなく、ザンクは、トウシに対して、ずっと、劣等感を感じていた。

 劣等感だけではなく、悔恨や屈辱など、あまたのマイナス感情に包まれてきた。

 自分と同じ頭脳労働系の天才でありながら、自分を置き去りにしていく超天才に対して、『なぜ俺ではなくお前なんだ』と、どうしようもない嫉妬を抱き続けた。

 そんな複雑な感情を、ギリギリのところで受け流しながら、今日までずっと、つたない道化を演じつつ、惨めに生きてきた。


 『気にしていませんよ感』を演出しながら『クソダセェ嘘』で自分を守りながら――けれど、『本音』の部分では、いつだって、『トウシより下であること』に――『ナンバー2以下で在り続けること』に、強い劣等感をいだいて生きてきた。



 ――テラスは、その劣等感を殺してくれた。



 『トウシに対する劣等感』は、きっと、今後も、ことあるごとに、まるでゾンビのようによみがえっては、ザンクを苦しめるのだろうけれど……けれど、『それでもいい』と思えるぐらい、ザンクの中で、テラスの言葉が『支え』になった。


 絶対的な精神的支柱。

 それがあれば、決して折れることはない、

 そう確信できる、甘くて強い錯覚。


「これは、もはや『依存』の領域……おそらく、今後、ザンクさんは、センテラスがおらんと生きていけんのやろう……けど、『その方がええ』と、心が叫んどる……気持ちの悪いスイーツ脳……けれど、だからこそ、ザンクさんは先に行ける」


 ザンクの可能性が、

 テラスの可能性をこじ開けていく。


 これで限界だと思っていた壁を、悠々と超えていく。



「……『プラス』……プライマル……」



 こみあげてくる全てを、

 ザンクは叫ぶ。



「――プラチナァァアアアアアアアアアアア! スペシャルゥウウウウウウウウウウウウウウ!!」



 輝いていく。

 プライマル・プラチナスペシャルの向こう側。


 ザンクがたどり着いた世界。

 プラス・プライマル・プラチナスペシャル。



 ――『天照坐皇大御鏡あまてらしますすめおおかがみ』。



 それは、まるで、『朧月夜の散歩』のように、

 泡沫うたかたいつくしみながら、

 みやびうれいを、清涼にもてなしている。


 月光が薄い雲を切り裂いて、夜の海に、陽炎のような道をつくりだす。

 楚々(そそ)とした東雲しののめに揺れる玉響たまゆらが、

 蓮華れんげの上にす太陽とともに、魂魄の隷属を求めていた。



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