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22話 ダサいザマを晒すぐらいなら、別に独りでも構わんと思っとった時期が、ザンクさんにもありました。


 22話 ダサいザマを晒すぐらいなら、別に独りでも構わんと思っとった時期が、ザンクさんにもありました。


「……はぁ……はぁ……おら、どうした……手と足が止まっとるぞ……ビビっとんのか? 情けないやっちゃで。それでも、ヤンキーの王様か?」


「この状況で、何にビビればいいか、教えてほしいところだね。一ミリも分からないから」


「アホには分からんやろうなぁ……」


 と、言いながら、

 ザンクは、握りしめた拳を、蝉原に向かって突き出す。

 『素の蝉原』からしても、遅すぎて、避ける気さえしない拳。


 こんなものを回避する方が恥ずかしいので、顔面で、シッカリと受け止めた上で、


「――ここまでだ。もう、十分、付き合ってあげた。これ以上は、逆に、俺の格が下がる」


 そう言うと、

 蝉原は、ザンクの顔面を掴んで、

 ザンクの足を払い、重心をズラしてから、

 そのまま、ザンクの後頭部を、地面に向かってたたきつけた。


「うげはぁあっ!」


 脳がシェイクされる衝撃に、つい、とことん『みっともない悲鳴』をあげてしまうザンク。


「うげぇ……おぼぇ……」


「閃くんと約束してしまったから、君を殺すわけにはいかない。こういう『縛り』って、本当に面倒だよ。……できれば、もっと、気ままに、思うがままに、己の悪を執行したいところ」


 などと言いながら、

 蝉原は、テラスに視線を戻し、


「けど、まあ……俺にとって、『もっとも特別な人』の『鎖』だ……何があっても、失うワケにはいかないね」


「約束を守ってくれてありがとう」


「礼なんて、やめてくれよ、閃くん」


 ほがらかな雰囲気で会話をしている二人の横で、

 ザンクは、


「ゼぇ……ハァ……」


 粗い呼吸で酸素を取り込みながら、

 フラつく足を殴りつけて、どうにか立ち上がる。


 そんな彼に、蝉原は、


「寝てなよ、田中ザンク。もう君の出番は終わった。少なくとも、今、この瞬間における君の道化タイムは終了だ」


 虫ケラを見るような目でそう言ってから、


「最後だし、少しぐらい褒めておこうか。この場に限って言えば、そこそこ、うまく踊れていたと思うよ。君は無能の中ではマシな方だ。えらい、えらい。というわけで――」


「とっくに……」


「ん?」



「……とっくに、天元突破したと思っとった……」



 ザンクは、フラつきながら、

 血にまみれながら、

 それでも、まっすぐに、

 豪胆な視線で、蝉原をにらみつけて、


「もうこれ以上はない……そう確信しとった。……けど……どうやら、まだ……底があったらしい」


「ごめん。ちょっと、何言っているかわかんないな」


「……『コレ』にわずらうと……『落ちていく』っていう、都市伝説は……ホンマやな……この感情にハマると、どこまでも、際限なく墜ちていく……」


「……」


いびつな炎にがされる……冷静に考えれば『拘束』でしかない、『赤い糸』とかいう幻想に惹かれる……とめどない脳内麻薬で頭の中が犯される……『誰よりもロジカルやった頭脳』が、感情論にボコられて……どこにでもおる『ただのアホ』に墜ちてしもうた……」


 ギリっと、奥歯をかみしめる。

 言葉が、自分を縛り付ける。

 この鎖は、メンツでも、意地でも、誇りでもない。


「そんなダサいザマを晒すぐらいなら、別に独りでも構わんと思っとった時期が……ザンクさんにもありました……」



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