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16話 絵に描いた、からっぽのヌケガラ。


 16話 絵に描いた、からっぽのヌケガラ。


「いくぞ、蝉原ぁあああ! 死ねぇええええええっ!!」


 愚直な突撃。

 異次元に達したザンクの拳が、

 蝉原の顔面を的確にとらえる。


 蝉原は、避けようと、壁を張ったり、ワナを張ったり、機雷を置いたり、

 色々、策をうっていたのだが、

 全部、力技で突き抜けられて、そのまま、

 ガツンと、思いっきりぶん殴られた。


 『まっすぐいってぶっとばす。右ストレートでぶっとばす』。


 顔面を砕かれた蝉原は、


(……これは……ダメだな……『それなり』に上昇してしまった。……今の俺では、対応できないスピードとパワー……ちっ……)


 表には出さないように、

 心の中だけで舌打ちしつつ、


(屈辱的な話だが……『ここら辺』が、『俺単体』の限界……できれば、規定路線から外れたかったけれど……結局、どうしても、『限界以上』にはなれない……)


 自分自身の器の小ささに歯噛みする。


(ほしいな……というか、必須。『ここから先』を求めるのであれば、俺にも絶対に必要だ。……どれでもいいから……『田中(CPU)』が欲しい……手に入れなければ、『中ボス』か『噛ませ犬』か『敗戦処理』しか出来ない……そんな惨めな末路は許容できない。……どんなに最悪な結末になったとしてもかまわないが、『センエースを煩わせた仇敵』という称号だけは失いたくない!)


 自分のポジションは理解している。

 だが、理解しているからといって、

 立場を受け入れている訳ではない。

 蝉原にも、『欲しいもの』はある。

 『そいつ』を手にいれるためには、

 どうても、『田中』が必要不可欠。



(……おっと……未来に意識を向け過ぎた……)



 蝉原が、『はるか先』を考えている間も、

 ザンクは、凶悪な暴力で、蝉原をボコボコにしている。


 その高い知性をまったく活かさず、

 アホのヤンキーよろしく、やみくもに拳をぶんまわす。


 現状、ザンクは、『手に入れたばかりの強大な力』に振り回されている。

 ハッキリ言って、まったく使いこなせてはいない。

 それでも、強い。

 あまりにも大きいから。


 これは、『センテラスの可能性』がそれだけ大きかったということ。

 彼女の中にある可能性は、まさにセンエースのソレ。

 莫大で膨大。

 ありえないほどの質量。

 たった一人の個が、すべての世界に匹敵――あるいは超越しているという、異次元の器。


(さっさと、この茶番を終わらせようか……まったく……俺に、道化ばかり押し付けるのは、やめてもらいたいんだが……)


 心の中で、ため息をついてから、

 蝉原は、

 極めて優雅に、艶やかに、

 それでいて、とても力強い、

 まるで、歌舞伎の見得のように、 




「――『空蝉うつせみや、物憂ものうれいげな、風景画』――」




 何かを詠った。

 すると、その直後、

 ザンクと蝉原の二名が、

 特異な空間に閉じ込められる。


 見た目だけは限定空間と似ているが、

 しかし、性質はまるで違う。


 ザンクは、ザっと周囲を確認しつつ、

 瞬時に解析して、


「……ここは……『短時間、無敵になれる空間』とかか?」


 積まれる前に解析してしまえば、暴露を受けても効力はない。


「解析力だけは、まあまあだねぇ」


 などと言いつつ、

 蝉原は、一応、


「1分が限界だし、こっちから手を出すことはできない……でも、色々と積むことはできる。なかなか、優れた空間だろう?」



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