2話 強化パーツの強化パーツ。
2話 強化パーツの強化パーツ。
「もう、こうなったら、究極超神化10までいってまおう。なっ」
「なっ……と言われても挨拶に困る。俺に可能な変身は究極超神化5までだ」
「はぁあ?! ジブン、ふざけとんのか?! そんな、アイ〇ォン5ばりの旧バージョン変身しか使えんやつが、スーパーを名乗んなよ! みっともない!」
「だから、自分で名乗る気はないと言っている。勝手に、その符号をつけられていただけで、こっちも非常に迷惑している」
「くそがぁああ! 『こいつやったら、どうにかなる』と思って、ドヤ顔で召喚したのに、クソの役にも立たんのかい、あほんだらぁあ、ぼけぇえ、かすぅう!」
罵詈雑言をツバで飛ばすザンク。
そんな彼を尻目に、ソンキーは、
「……俺一人では話にならないが……」
そう前を置きつつ、
テラスを指さしながら、
「あそこにいる『ド変態』の異次元同一体と、お前の力があれば……可能性はある」
「え、マジで?!」
「幸い、パーツはそろっているようだ。個人的には、あまり好きな手段じゃないが……無様に敗北するよりはマシだろう」
負けず嫌いの闘神は、そう言いながら、
ザンクの目を見て、
「お前が俺の強化パーツになり、その上で、俺が、『あのド変態』の強化パーツになれば……可能性はある。お前が『強化パーツの強化パーツ』という『歯車の一つ』に成り下がる覚悟があるのであれば――」
「今のザンクさんにとって、プライドなんざ、犬のエサ以下や。歯車上等。むしろ、そっちの方が心地ええまである! センテラスを助けられる可能性があるんやったら、ザンクさんの全部をくれてやる。あまさず持っていけ! 釣りもいらん!」
「――他はクソだが、その覚悟だけは見事」
そう言いながら、ソンキーは、
ザンクの胸に手をあてて、
「あずかるぞ。お前の可能性」
グンっと、ザンクの意識が深くなる。
一瞬だけ、視界がブラックアウトして、
気づいた時には、
(――……ん……これは……)
『自分の肉体を失っている』という『気づき』に届いたと同時、
意識の中に、ソンキーの声が入ってくる。
「集中しろ、ザンク。俺の中から、俺の全部を引き出せ。その上で、あの『ド変態』と合体すれば……最強の概念になれる……その可能性はゼロじゃない」
(フワフワした概算やのう……まあ、ええわ。可能性がゼロになり尽くさん限り、最後の最後まで、全力であがいたろうやないか)
そこで、ザンクは、人生で一番の集中力を魅せる。
とにかく、『ソンキーの道具』になることを求めて全力。
その作業は、性にあっていた。
重たい肉体を棄てて、思考だけ没頭するのは、
非常に心地の良い瞬間だった。
――呼吸さえシカトして、ただ、思考のみにすべての魂を費やす。
その結果、ザンクは、完璧なCPUになれた。
凶悪な演算速度を誇る最強の強化パーツ。
そんな、最高峰のパーツを入手したソンキーは、
「……いいぞ、ザンク。やはり、お前はスペックが高い。そのイカれた頭脳で、俺の『解放を阻害する暗号』を解読してくれ」