1話 一人じゃなんにもできんから、力を貸してくれ。
1話 一人じゃなんにもできんから、力を貸してくれ。
「――天才で生まれてきたことを、今この瞬間ほど感謝したことはない」
自分の運命に感謝するザンク。
心が解放されていく。
――ザンクは、
テラスが目の前に出現した時からずっと、
コスモゾーンへのアタックを続けていた。
現状をどうにかしたいという強い思いを力に変えて、
必死になって、プロテクトの解除に挑んだ。
これまでとは次元の違う集中力と覚悟を結集させたことで、
ついさっきまで、『絶対に破れない』と思っていた壁を破壊することに成功した。
もしかしたら、これも、既定路線かも?
などという疑念が、頭の中をかすめたりもしたが、
しかし、どうでもよかった。
そんな、『低次の悩み』に付き合ってられるほど、
今は、ヒマではないし、余裕もない。
「自分の中に、こんだけ重たいもんが隠れとったとは……これが……親戚連中が感じ取ったもん……なるほど……これはたまらんな……バカにしとったけど……これは、確かに、他の何よりも価値がある……」
自分の中に芽生えた感情を、
まるで、『初見の初孫』ぐらい大事そうにギュっと抱きしめる。
「壁を超えた喜びよりも、動機になったもんの方がはるかに大事……なんのために生きるのかが見えて、そのために出来ることがあるという事実に震える……これが、幸福……生きる意味……」
真理が頭の中を駆け巡る。
これまでは、どうしても掴み切れなかった答えに届く。
「あいつを……センテラスを守りたい。絶対に死なせたくない。……だから……力を貸してくれ……『スーパー・ソンキー・シャドー』……」
呼びかけると、
『彼』は応えてくれた。
コスモゾーンの禁域に隠されていた、最強の影。
爆裂みたいなジオメトリの奥から、
這い出るように、『彼』はきた。
――『彼』は、現世に顕現すると、ゆらりと、世界を睥睨して、
「……最初に言っておくが、あのド変態が大好きな王子ネタはやらないぞ。そもそも自分でスーパーを名乗る気はない。俺のことはソンキーと呼べばいい」
出現したのは、圧倒的な力を持つ完璧なイケメン。
破格の覇気を纏っている『彼』に、ザンクは、
「名前なんかどうでもええ。それより、助けてくれ。あそこにおる『悪人面のヤンキー女王様』を殺さんと、色々やばいんや」
そこで、ソンキーは、蝉原に視線を送る。
3秒ほど眺めてから、
「無理だな。俺では勝てない。話にならないと言ってもいい」
「そんなこと言わんとどうにかしてくれ。お前、最強闘神の影なんやろ? コスモゾーンの禁域に、お前の伝説に関する詳細が記されとった。舞い散る閃光に勝ったことすらある究極超神。影とはいえ、そんなソンキーのスーパーバージョンなら、究極超神化8ぐらいいけるやろ? なんやったら究極超神化9ぐらい出来るんとちゃう? いや、もう、こうなったら、究極超神化10までいってまおう。なっ」
「なっ……と言われても挨拶に困る。俺に可能な変身は究極超神化5までだ」
「はぁあ?! ジブン、ふざけとんのか?! そんな、アイ〇ォン5ばりの旧バージョン変身しか使えんやつが、スーパーを名乗んなよ! みっともない!」