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最終話 自由なワガママ。


 最終話 自由なワガママ。


「他人の感情はどうでもいい……これは……私のワガママ……どんな状況でも……私は、絶対に……絶対的自己中心スタンスを貫く……」


 ズタボロの状態なのに、まだまだ抗い続けると、その意思を示している。



 その瞳を見た蝉原は、


「君は……本物だ……君は、間違いなく、閃くんだね……性別なんか関係ない。男だろうと、女だろうと、君は、いつだって、まっすぐな君のままでありつづける」


 そこで、天を仰ぎ、


「美しい」


 ボソっと、そうつぶやいた。


 その向こうで、ザンクは、


「……なんにも美しくないわ、ボケ……ここまでキショいことされたら、こっちの心がもたん……もう、ほんまに勘弁してくれ……もう、俺のことはええから……もう、守ってくれんでええから、一緒に死のうや……この状況やと、それしかないんは分かるやろ。もう、むりやて。……お前、絶対に賢いはずやのに、なんで、その程度のことがわからんねん」


「私は……賢くない」


 そこで、テラスは、起き上がり、


「だからこそ、出来ることが……ある……っ!」


 それが何なのか、具体的には知らない。

 知りたいとも思わない。

 だからこそ。

 彼女は、いつもの想いを口にする。


 道化のマスクを深くかぶって、

 自分の恐怖心にふたをする。


 本当は怖くて仕方がないけれど――そんな自分の弱さを、感情だけで拒絶する。

 この『ワガママ』だけは絶対に貫く。

 その覚悟だけは、ゆるぎない。

 絶対に、誰にも邪魔させない。

 ――さあ、詠おう。

 詠おうじゃないか。


 ただの薄っぺらな見栄を。

 虚飾で膨れ上がった、豪勢なコケオドシを。




「ヒーロー……見参……」




 その言葉に、何の意味がある?

 知らんよ、そんなこと。

 どうでもいいよ、意味なんて。


 そんなもんなくたって、

 無様に、惨めに、みっともなく、あがき続ける。


 ――これは、そういう覚悟の表明に過ぎない。




「私は、まだ……ここにいる……だから、何も……終わっていない……」




 その背中を魅せつけられたザンクは、

 もう、自分の感情を理解していた。


 自分の中に眠っていたものが、ひどく暴走しているのを感じる。



「……ああ、そうやな……確かに、なんも終わってない……てか、終わりたくない……せっかく、出会えた……その幸運を失うのは……さすがにイヤやな……一緒に死ぬのも悪くないけど……一緒に生きる方が、もっとおもろいに決まっとる……」


 覚悟が膨れ上がっていく。

 テラスと出会ってから、今にいたるまでの短い時間の中で、

 種をまき、水をあたえ、すくすくと育てた。

 まるで、『ジャックと豆の木』みたいに、

 秒速で、天を貫くほどに成長した心の大樹。


「最悪、死ぬことになったとしても……お前だけは守って死ぬ……男の意地なんてもんが、ザンクさんの中にあったことが驚きやけど……まあ、それも風流かな」


 などと、丁寧に想いを口にしてから、

 ザンクは、



「――天才で生まれてきたことを、今この瞬間ほど感謝したことはない」



 自分の運命に感謝する。

 心が解放されていく。



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