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128話 俺に、そこまでされる価値はないから!


 128話 俺に、そこまでされる価値はないから!


 気付いた時、テラスの腕は宙を舞っていた。

 遅れてやってくる激痛。

 ダラダラと流れていく血。



「っ……がぁあああああっ!」



 激痛に悲鳴をあげるテラス。

 奥歯をかみしめて、

 必死に、オーラで止血する。


「け……欠損治癒ランク12……」


 経験上、腕が飛んだことなど慣れっこなので、

 とてつもない激痛の中でも冷静に、即座に、魔法で回復しようとするが、


(――っ?! ちっ……回復魔法の影響だけが阻害されている……っ……あのクソ不良野郎……私の腕に、高位のバラモウイルスを仕込みやがった……やばい……存在値に、ここまで差がある現状じゃあ、処理できない……)


 そんな彼女の様子を見た蝉原は、

 美しい絵画を見つめる表情で、


「痛みに対しては、ちょっと悲鳴をあげただけ。その後、すぐに回復魔法を使い……使えないと分かると、すぐさま、現状を把握して、ウイルス除去に動くあたり……経験値の高さがうかがえるね。やはり、君は、これまでに、多くを経験しているらしい」


 そう言いながら、

 蝉原は、ゆっくりとした速度で、

 先ほど、テラスに突き飛ばされたザンクの元まで歩いていく。


 そして、もう一度、ザンクの頭をつぶそうと、

 蝉原の視点ではゆっくりとした拳を突き出す。


 その動きに対して、

 テラスは、また同じムーブでザンクをかばう。


 その結果、また、テラスは大きなダメージを体におった。


 激痛のあまり悲鳴をあげる。


 ――そんなことを、その後、何回もくりかえした。


 結果、テラスの体はグチャグチャのズタボロになる。


 あまりにも痛々しい姿を見たザンクが、

 ここまでに、何度か、


「もうええて! いや、ほんまに! 死ぬから! 俺に、そこまでされる価値とか、ないから!」


 ザンクには、まだ、イタズラな領域外の牢獄の呪いがかかっている。

 本当は生きたくて仕方がない。

 怖くてたまらなくて、助けてほしくて仕方ない。

 けれど、そんなザンクに『もういい』と思わせるほど、

 テラスは悲惨な状態になっていた。



 ズタボロのテラスに、ザンクは、


「いや、マジで、ほんま、なんで?! ここまできたら、もはや怖い! この状況、サイコホラーやて! マジ、なんなん、ジブン! なんで、そんな、何がなんでも俺を守ろうとしてんの?! 俺、あんたに、なんもしてへんよね?! どういうこと?! ほんま、なんで?!」


 そんな、『本気』の問いかけに対し、

 朦朧として、なかば意識を失っているテラスは、



「……この手で救えなかった命は……沢山ある」



 とうとうと、想いを語りだす。


「私は……全知全能じゃないから。……世界中の、全部の『救いを求める声』には応えられない……でも、だからこそ……せめて……目の前の命ぐらいどうにかしたい」


 本気の想い。

 ファントムトークが介入する余地のない、

 まっすぐな本音。


「……それすらできないなら……力を求めた意味がない……自分の全部を賭して磨いてきたものを……無意味にしたくない……」


 壊れた目で、

 蝉原をにらみつける。


「他人の感情はどうでもいい。あんたらの想いなんか知ったことか。……これは……私のワガママ……どんな状況でも……私は、絶対に……絶対的自己中心スタンスを貫く……」


 ズタボロの状態なのに、まだまだ抗い続けると、その意思を示している。




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