120話 禁止魔カードはもう1枚。
120話 禁止魔カードはもう1枚。
「信じられないぐらいパワーアップしていた。けど、私は、私より強い程度の雑魚には負けない」
「……くく……すごいねぇ」
蝉原との闘いで消耗したテラスに、
蝉原は、余裕は崩さず、
「……ところで、疑問に思わなかったかい? サイアジが取り出した禁止魔カードは2枚。けど、まだ1枚しか使っていない」
「……え、ああ……そういえば……え……? ちょっと待って……やめてよ……ここから、さらにもう一段階とか……」
と、テラスが普通にビビっていると、
そこで、テラスの影から、ガバっと、『サイアジさん』が飛び出してきて、
――テラスを羽交い絞めにしてしまう。
「はっ?! サイアジ?! え、なんで?! どういうこと?!」
困惑しているテラスに、
サイアジが、
「――禁止魔カードのほかに、もう一つだけ隠し玉があった。それが私だ。おそらく貴様は、『私が蝉原になった』――と思っていたことだろう? 残念。手品に近い手法で、そう思わせただけで、実際のところは、『私と蝉原の二人がかりで、貴様を倒す』というが計画だった」
「っ!」
「もらうぞ、センテラス。貴様のカオス」
そう言ったサイアジの向こうで、
蝉原が、
「ま、もらうのは俺だけどね」
風雅にそう言ってから、
「――『はないちもんめ』――」
宣言しつつ、禁止魔カードを破り捨てる。
すると、
蝉原の体が、紫銀のオーラに包まれた。
自分が、奇妙な色のオーラに包まれたことを確認してから、
蝉原は、
『サイアジに羽交い絞めにされているテラス』の頭を掴み、
「……いただきます」
そう言ってから、口を大きく開けた。
「ちょっ! まっ――」
瀬見原の『開いた口』がメリメリと音をたてて広がっていき、
通常の口のサイズの十倍以上になったところで、
バグっと、テラスに食らいつく。
もぐもぐと、しっかり咀嚼していく。
まるで、テラスの全てを奪い取ろうとしているみたいに。
そして、しっかりと時間をかけて咀嚼したのちに、
まるで、味のなくなったガムでも捨てるみたいに、
ペっと、『テラスの体だけ』を吐き出した。
唾液でべたべたのテラスは、
その不快感よりも先に、
「や、やばっ! ち、力を……っ?!」
『奪われた』ということをすぐさま理解した。
力が全く出ない。
神化もできない。
オーラと魔力が恐ろしく微弱になっている。
「え、ちょっと待って……これまで、死ぬほど時間をかけて、アホほど頑張って積み上げてきた力を、秒で奪われるって……なに、これ。どういう悪夢? マジで勘弁してほしい。ていうか、粘液、きったな……」
力を奪われたことに対して憤慨したのちに、
べとべとの唾液に対して怒りをあらわにする。
その間、
蝉原は、
「お、おおお……おおおお……っ!」