117話 世にも奇妙な女たち。
117話 世にも奇妙な女たち。
「これなら、喜んでもらえるのかな?」
「……ま、まあね。ただ、できれば、ヤンキー系じゃなく、清楚でおしとやかなスタイルにしてくれた方がよかったかな」
などと、どうにか、ギリギリのところで、ファントムな返しを通すテラス。
蝉原は、フフっと微笑んで、
「それだけは勘弁してくれ。俺に『アウトロー以外の立ち回り』を期待されても困る。中身はもちろん、見た目においてもね。なんせ、俺は……」
さらに膨らんでいく。
とめどなく、
蝉原は加速する。
「――宇宙一のヤクザになる男だから」
まだまだ強くなっていく蝉原に、
テラスは、冷や汗を流しながら、
「……美少女の姿で、そのセリフを言われても、挨拶に困るかな」
などと言いつつ、
テラスも、オーラを爆増させていく。
置いていかれないように。
必死になって、今の『ここ』よりも、もっと高い場所を目指してあがく。
そうやって、膨らんでいくテラスを見て、
蝉原は、恍惚の表情で、
「ああ、やはり、君は最高だ……」
そうつぶやいた直後、
その場から姿を消した。
それまで黙って様子をみていたザンクの目には、
ただ消えたようにしか見えなかった。
あまりにも超越的な速度。
ザンク程度では絶対に追えない領域。
――テラスですら、対応するのがギリギリの速度。
「ぐっ!!」
脇腹を『えげつない蹴り』でエグられたテラス。
かわせると思ったのだが、
想像以上に、蝉原の動きがキレていた。
「っ……神速閃拳――」
速度で押された時は、
とりあえず、中間択のジャブ連打で様子を見る。
――そんなセンの思考ルーチンを読んでいた蝉原は、
ほんの少しだけ距離を取って、パチンと指を鳴らす。
すると、
テラスの拳が、何かに当たった。
そして、『触れた』と認識した直後、
膨大な魔力を誇るブラックレーザーが、テラスの腹部にぶちささる。
「ぐっ……はっ……がぁああああっっ!」
黒いレーザーは、テラスの体の中に入った瞬間、性質を大きく変化させて、まるで、アルカノイドの玉みたいに、何度も、何度も反射して、テラスの体をグチャグチャにしていく。
テラスは、
「あああああっ! 暴れるな! き……消えろっ!」
自分の体内に右腕を突っ込んで、
暴れるレーザーを、わしづかみで消失させる。
その光景を冷静に観察していた蝉原は、
「事前に、イビルノイズ・カンファレンスコールを機雷型で空間に設置しておいたんだ。魔力感知でバレないよう、フェイクオーラを何重にも仕込んだ上で。ちなみに、全部で100ほど設置してある。どこに設置されているか分からないカンファレンスコールをかいくぐりながら、俺に攻撃することができるかな? あ、ちなみに、この『暴露のアリア・ギアス』を積んだことで、一個一個の火力が上昇したからね」
「……」
「君との死闘は、何度も何度も経験してきた……俺は『学習能力のないバカ』じゃないんでね。君と積み重ねてきた時間は、ちゃんと、全部、血肉にしてある。俺なんかよりも、君の方が、はるかに美しい。それは間違いないけれど……でも、だからって、そう簡単に、今の俺を殺せるとは思わない方がいい」