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115話 たどり着いたのは、混沌の終着。あるいは、渾沌の執着。


 115話 たどり着いたのは、混沌の終着。あるいは、渾沌の執着。



「その程度が限界か? 程度の低い異次元同一体だな。……いや、もしかして、ただのパチモノか? 貴様は、P型の何号だ?」


「ゴリゴリのオリジナルであるこの私をパチモノ扱いとは……なかなか、気合が入ったニーチャンだ。褒めてつかわす!」


 イラつきを隠さずに、そう言い捨ててから、

 魂にオーラを集中させて、


「はじめてですよ。この私をここまでコケにしたおバカさんは。……まあ、実際のところは、全然、はじめてじゃないけど。今日までに、何度も、散々、各方面からコケにされてはきたけれども」


 などと、どうでもいい言葉で間を繋ぐ。

 ファントムトークに『表の処理』を任せて、

 深部では、次の高みのために意識を集中させている。



「あんたは本当に強いから……見せてやるよ。私の……」



 輝きが、深部に集中していく。

 すべてが高まっていく。


「――上限を」


 深く、深く、深く、


 輝きが、さらに増していく。


 遠く、遠く、遠く、


 ――そして、

 ――だから、






「真・究極超神化7。プライマルトランスフォーム『廃する太陰』レベルアウターゴッド/カオスルナティック」






 たどり着いたのは、

 混沌の終着。

 あるいは、

 渾沌の執着。


 狂ったように、

 圧縮されたオーラが、

 高く、高く、膨れ上がる。




 ――テラスの上限を見たザンクは、

 魂を奪われたみたいに、ただただ見蕩れていた。




(人という概念は……そこまで高いところに登れるもんなんか……)




 これまで、ザンクは、自分が一等賞だと思っていた。

 『天才性において、トウシには負けている』と思いながらも、

 『暗号解読の分野では自分が一等賞だ』と思っていた。

 そして、もっと言えば、

 『自分がその気になって本気の本気を出せば、トウシや神を抜いて、自分が、最上位の一等賞になることも不可能ではない』と考えていた。


 トウシを出し抜こうと考えていたのは、

 『自分が一等賞である』と証明したかったから。


 ――けれど、この日、この瞬間、

 ザンクは、『一等賞』を求めることをやめた。


 『一等賞は、あの女である』


 と、魂が思ってしまったから。


 『心が折れた』というわけではない。

 『魂が認めた』のである。


 だから、晴々とした気持ちになっていた。

 『敗北の悲痛』などは皆無。

 ただただ『この世のコトワリを理解できた』という、

 奇妙な満足感に包まれていた。


(……センテラス……エグい女や……)


 気づけば、動悸が加速する。

 心臓が謎の速さで鼓動する。

 奇妙な汗が全身に噴き出る。

 これまでにない経験だった。


 深部から、何か、得体のしれない感情が沸き上がってくる。


(……ノドがつまる……体が熱い……血の音が聞こえる……)


 産まれて初めての経験に困惑する。


 ザンクは、『自分の中に芽生えた感情』を理解しようと頭を動かした。

 並列処理で、無数の角度から、豪速で、解析演算をこころみる。

 けれど、答えはでなかった。

 理解できない。

 もっといえば、理解したくない。


 まるで、底のない海で溺れているような、

 はるか高所から落下しているかのような、


 熱い恐怖と、重たい不快感、

 そして、意味不明な高揚感。




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