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103話 誰でもいいから、誰か助けて。


 103話 誰でもいいから、誰か助けて。


「――田中・イス・斬九。言っただろう。貴様はすでに役目を終えている。――もうすでに、あらかたの器は出来た。つまり、貴様の魂には、もう意味がない。無意味な魂に救いなどあるはずがない。あってはいけない」


 丁寧にザンクの心を殺しにいくサイアジ。


 精神の殺戮は、完璧に成功していた。

 ザンクの心は、どんどん壊れていく。


 『お前の命は無意味』と烙印を押されたザンクは、

 まるでイヤイヤ期の子供のように、顔を横にふりながら、


「そ……そんなワケない……」


 ボタボタと、止まらない涙をあふれさせて、


「俺の命は……無意味やない……」


 そこで、最後の気力をふりしぼり、

 キっと、サイアジをにらみつけて、


「俺は、そこらの凡人なんかよりも、よっぽど優秀やろがぁあああ! そこらの雑魚では出来んことがたくさんできる! せやのに、なんで、その俺を殺すんやぁ! アホなんか、ジブン!! 利用せぇよ! 殺すな! 生かせ! 殺すなぁあああああああ!」


 必死になって、死にたくないと連呼するザンクに、

 サイアジは、冷めた顔で、


「貴様の自由意志が残っていたら、真・神帝陛下のノイズになる。欲しいのは『機械的にものごとを処理できるCPU』であって、『不完全な心を持ったバディ』ではない。『心を持つバディというコマ』も、真・神帝陛下には必要なパーツの一つはあるが、それほど重要な役割を、貴様がこなせるわけがない。そのポジションには、もっと『高みにある神』がつく」


「……」


「貴様は確かに優秀だ。だが、それだけだ。『一番』優秀なわけですらない。ただ優秀なだけの半端な天才。――だから、もう必要ない」


「……」


「トウシ級の天才となってくると、さすがに代替はきかないが、貴様程度の天才なら、他にもストックはある。ウラスケのような希少性もない、ただの『器用貧乏』な貴様に出来るのはここまでだ」


「……俺には……もっと出来ることがある……俺には、もっと可能性がある……だから……殺さんといて……お願いやから……頑張るから……もう、ずっと、レールの上を走るから……せやから――」


「何度も言わすな。貴様はもう必要ない」


「……」


 ザンクは、うなだれて、


「う……うぅ」


 頭を抱えて、



「誰か……」



 必死になって、


「助けて……」


 救いを求める。

 届かないのは知っている。

 誰も助けてくれやしない。


 そんなことは知っている。

 けど、

 極限状態では、

 叫び続けるしかないんだ。


 この日、ザンクは、『命の弱さ』を理解した。

 それは、とても大事なもの。


 ――『ここから先』へ進むためには、もっとも大事なもの。



「……たす……けて……誰か――」




 別に。


 その想いに応えようとしたわけではない。


 『彼女』は、

 ただ、舞い降りただけ。






「――ヒーロー見参――」






 彼女は、そう言って、

 ザンクの盾となるポジションを陣取った。


 ザンクは、反射的に、バっと顔をあげた。

 すると、目の前には、『同年代ぐらいの一人の女』が立っていた。


「え……誰……」


 知らない背中だった。

 ザンクの疑問符に応える彼女。

 振り返って、ザンクの顔を見る彼女。


 彼女の顔……どこかで見たことがある気もしないでもない。

 しかし、それは、デジャブレベルでしかなく、誰かは、さっぱり分からない。

 彼女は、ザンクの『誰?』という問いに、不敵な笑みを浮かべて、






閃壱番せんてらす、探偵さ」






「……せん……てら……す?」


 そこで、ザンクは、彼女の顔つきや雰囲気が、

 どことなく、センエースに似ているということに気づく。


 『そう言われれば、そうともおもえなくもない』というレベルでしかないが、

 似ているか似ていないかで言えば、まあ似ていると言っていいレベルだった。




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