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99話 気が変わった。三時間だけ待ってやろう。


 99話 気が変わった。三時間だけ待ってやろう。


「ちょっ……おまっ……時間くれるんちゃうんかい……」


「敵の言うことを、なぜ、信じた? なぜ、貴様が強化されるまで、私が待つと思った?」


 ケロっと、悪びれる様子もなく、

 サイアジは、そう言ってのけた。


 そのセリフに対し、ザンクは、渋い顔で、


「……いや……まあ、そのご意見は、至極正論やけども……ぐうの音も出んけれど」


 サイアジの言っていることに間違いは一つもない。

 敵の言葉を、普通に信じる方が愚かだった――と、ザンク自身も思った。


 そこで、サイアジさんは、優しい笑みを浮かべて、


「だが、今、気が変わった。本当に3時間ほど待ってやる。さあ、またスキをさらすがいい」


 非常に優しい御言葉。

 その『あまりにも都合が良すぎるセリフ』に対し、ザンクさんは、


「……いや、やめとくわ」


 心底ダルそうな顔で、そう返事を述べる。


「なぜだ? 私は3時間待つと約束しているんだぞ。その時間を有効的に活用するべきではないか?」


 そう言いながら、サイアジは、ザンクに背中を向けて、


「ご覧の通り、私は、貴様に背を向けている。このまま、私は3時間ほど睡眠することにしよう。さあ、静かに、自由に、豊かに、救われているかのように、『神化するための道』を模索するがいい」


「……ほな、お言葉に甘えて」


 そう言いながら、ザンクは、

 意識をサイアジに向けたまま、

 集中するフリをしてみせた。


 すると、

 サイアジは、当たり前のように、

 クルっと振り返り、

 ザンクに右手を向けると、


「異次元砲」


 と、極悪な照射を放ってきた。


 『最初から完璧に予測出来ていた行動』だったので、

 ザンクさんは、普通に、その攻撃を回避する。


 『最初からくると分かっている、ゆったりとした異次元砲』ぐらいなら、さすがに回避は可能。


 ――自分の横をかすめていった異次元砲を見届けてから、

 ザンクは、サイアジに視線を向けて、


「……いや、もう、分かっとったから、文句を言う気はないけれども……」


「おい、ちゃんと集中しろ。そうでなければ、神化の方法を解析することはできないぞ。片手間に分析できるほど、神化の情報は浅くない。というわけで、さあ、さっさと、意識をコスモゾーンの深部に隔離させろ」


「……は、ははは、ははははは……」


 と、ザンクは、かわいた笑い声をあげてから、


「これは、ほんまに無理やなぁ……ゴリッゴリに詰んどるわぁ……」


 諦めたくはないが、諦めるしかない状況。


「まあ、ええわ。しゃーない」


 そう言いながら、ザンクは、天を仰いで、


「色々と、おもろい経験もできたし……まあ、そんなに悪くない人生やったんちゃうかな」


 と、あえて、晴々とした顔で、そんなことを言うザンク。


 『死を覚悟して、腹を決めた』――そんなポーズをとるザンクに、

 サイアジは、



「………………激しく不愉快。『さかしらに、悟ったフリをしている様』は、極端に幼稚すぎて、見ていられない」



 と、一言だけそう言うと、

 胸の前で両手を合わせて、

 頭の中で、神を想い、祈りながら、



「――『イタズラな領域外の牢獄』――」



 極めて特異な魔法を使う。

 魔法と呼んでいいのか微妙な代物。

 スキルでもあるし、たんなる概念でもあるし、

 もろもろ、理解しがたい、領域外の一手。


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