97話 『ザンクさんが勝てる可能性はあるのか?』『ないに決まっている』。
97話 『ザンクさんが勝てる可能性はあるのか?』『ないに決まっている』。
「どうした? もう終わりか? まだ、私のHPは1%も削れていないが?」
「……はぁ……はぁ……いや、もう無理やん……何したって、どうにもならへん……お前、強すぎるやろ……どうなってんねん……」
『普通の文句』が飛び出る始末。
とっくの昔に心は折れている。
序盤で『やる気』はなくしているが、
なんだか、時間を与えてくれるので、
色々と試してはいるが、
しかし、どれも『まあ、通じねぇんだろうなぁ』
と、思いながら、ほとんど投げやり状態の惰性を連打しているだけ。
「あのさ、一個聞きたいんやけど……一回戦の時みたいに、『ザンクさんが勝てる可能性』とかあるん? 『方法は教えてくれんでええ』けど、『その可能性があるかないか』だけ教えてくれん?」
その極めて消極的な問いに対し、
サイアジは、たんたんと、
「可能性などない」
確定している答えを口にする。
「現時点での私の存在値は1300。その上、私は『神化』が出来る状態にある。手抜かりなく手を抜いている状態の私に手も足も出ていない貴様が、本気の私をどうにかする手段などあるはずもなし」
「……神化……」
その情報は、コスモゾーンの特殊領域に記されていたので知っている。
神の領域に至った者は『神化』と呼ばれる『特殊な形態』になれるという話。
ただ、詳しい情報にはプロテクトがかかっていたので、
実際のところ、それを使った時に、どういう状態になるのかは知らない。
ザンクは、サイアジの言葉をかみしめた上で、
「……こんなことをお願するんもアレなんやけど……ちょっと、その神化ってのをやってもらえんやろうか? たぶん、ここで死ぬ気がするから、神化というのが、どういうものか、できれば、最後に、この目で見ておきたいんやけど」
「別にかまわないぞ」
そう言いながら、サイアジは、胸の前で手を合わせた。
その心は、まさに祈りの境地。
『高みに御座す神』を心に描きながら、
「――神化――」
それは、ハッキリ言ってしまえば、
ただの変身技である。
覚醒系の特殊スキルの一つ。
『武装闘気の進化系』に過ぎない。
すべてのステータスが爆発的に跳ね上がるという、
その『効果だけ』を記載した場合、本当に、極めて単純な技。
けれど、その変身技を見て、
ザンクは瞠目した。
つい、見蕩れてしまったのだ。
「……神……これが……」
膨大に膨れ上がったサイアジの様を目の当たりにして、
ザンクの戦意は『完全なる0』になった。
『神闘』という概念は、ある程度理解していたが、
そこに関しては、『ただの技術』という認識だった。
『神』という高次の概念に対しては心構えができていなかった。
先ほどの段階では、まだ、わずかに、
戦意というものが、ギリギリ……本当にギリギリ、
『コンマ1%ぐらいは残っていた』のだが、
神化状態のサイアジの覇気に触れたことで、
100%、キッチリと、抵抗心が砕け散った。