95話 真・神帝陛下。
95話 真・神帝陛下。
ザンクの残像は、より正確に言うと、わずかに質量をもった思念体。
決して見破られないように、看破されないように、
繊細な注意を払って仕上げた思念体だったから、
どうにか、竜人のセンサーを、ごまかすことができた。
それによって得た、ほんのわずかな時間と情報。
「……『真・神帝陛下』……か……なるほど、そいつが……『ザンクさんの敵』か」
竜人の頭上に転移していたザンクは、
「絶対殺す……いつか、必ず」
そう宣言してから、
左手を竜人に向けて、
「――遊々・亜異次元砲――」
特別に練り上げたF魔法。
『遊属性の異次元砲(無属性)』という、
あまりにもバグった技。
ちなみに『リカバリーするしかない』と言う発言もブラフ。
実のところ、既に、解析は完了しており、
自分の中にぶち込まれたウイルスを排斥&採取&改造&複製した上で、
この遊々・亜異次元砲にも投入している。
どこまでも自由に、クリティカルに、
ザンクは異次元砲をもてあそぶ。
ザンクの放った特別な異次元砲は、
「ぬっっ!」
竜人の頭にしっかりと直撃。
『火力そのもの』は屁みたいなものだが、
「……っ……」
竜人の体内で、『回復阻害のウイルス』がどんどん広がっていく。
しかも、ザンクが、改造したウイルスは、
ただ回復を阻害するだけではなく、
爆速で体力を奪っていく超猛毒仕様。
「……ザンクさんをナメんなよ、カスが」
バキバキの目でそう言うザンク。
すでに、腕は回復させている。
厄介なウイルスだったが、タネさえ分かれば、どうとでも出来る。
普通の頭脳と技能では、なかなか対処できない、エゲつないウイルスだが、イカれた天才の前では、ちょっと鬱陶しいデバフの一つにすぎない。
改造したウイルスを撃ち返すだけでは飽き足らない。
ザンクさんは、既に、『次の一手』にも入っている。
そんなザンクさんを尻目に、
竜人は、
「なるほど……面白い。想定していたよりは育っている様子。やはり、オリジナルの『舞い散る閃光』との邂逅は、かなりの成長を促す模様」
「ザンクさんがすごいってことを素直に認めてほしいけどなぁ。その言い方やったら、ザンクさんではなく、舞い散る閃光がすごいってことになるやないか」
「そう言っている。貴様自身に価値はさほどない。貴様は、あくまでも歯車。……『真・神帝陛下を強化するためのパーツ』……の『部品の一つ』に過ぎない……」
などと、ふざけたことを言いつつも、竜人は、ガクっと膝から崩れ落ちる。
すさまじい速度で、HPを削られていく。
ザンクに叩き込まれた毒に抗う術はない模様。
「タナカ・イス・ザンク……貴様は最善手を放った。……貴様自身の力だけでは、私の体力を削り切ることは、どれだけのバグ技を使ったとしても不可能。可能性があったのは、私が使ったバラモウイルスを大幅に改造して、私に打ち込むこと……」
「それしかないわけではないと思うけどなぁ。他にも、まだ、何個かはあると思うで」
「見事だ……よく、私を殺せたな……喝采に値する」
「そら、どうも。ところで、あんた誰?」
「……私は、神の傑作……『サイコ・パラミシ・アジ・ダハーカ(スリーピースカースソルジャー仕様)』」