94話 抵抗。
94話 抵抗。
「残念の一言で終わらせるには……ちょっと、もったいないな……」
ザンクはあがく。
レバーデインの時は、まだ『何もなかった』ので抵抗できなかったが、
しかし、今のザンクさんには手札がたくさんある。
『かなりキツい状況』であることは事実だが、
しかし、『何も出来ない』と嘆くには、あまりにもカードがありすぎた。
「――アマルッッ……ガメーションッッ!!」
まずは、『ザンバグとの合体』で、自身の魔力を底上げする。
バーチャやセンとの出会いを経て、
ザンクは、『ザンバグ』の扱い方もうまくなっている。
「――オート・アナライズ――」
自身の『回復を阻害する因子』を自動で解析させつつ、
ザンクは、朦朧とする意識を、どうにか奮い立たせて、
「――異次元砲ぉおおっ!」
魔力とオーラを大量にぶち込んだエネルギーの照射を放つ。
『イタチの最後っ屁』などではない。
しっかりとした下地のある一手。
かなり膨大な火力。
『そこらの大神級の龍』であれば、秒で消失する莫大なゲロビ。
だけれど、目の前の竜人は、
鼻で笑って、
「ただ魔力量が多いだけ。まったくもって練度の足りない異次元砲だな。これで、私を殺せると本気で思ったか? だとしたら、貴様の知性は虫並みだ」
かき消すでも、受け流すでもなく、
ただ、その身で受け止める竜人。
異次元砲は、無属性かつ貫通属性なので、ノーダメージということはなかった。
が、しかし、
「私の膨大な生命力の前では、この程度のダメージは蚊に刺されたようなもの」
竜人は、『バイタリティが高い』だけではなく、
『自然回復力もべらぼうに高い』らしく、
異次元砲で与えた『多少のダメージ』は、
ほんの数秒経過しただけで、すでに、全快してしまっている。
「意味のないあがきはやめろ。タナカ・イス・ザンク。お前ごときが何をどうしたところで、この状況は変えられない。それに、もう、十分、自由時間は堪能しただろう? ここから先、貴様の自由意志は必要ない。意志なき歯車としての役目をまっとうしてもらう」
たんたんと、そんなことを言う竜人。
と、そこで、ザンクは、
「――ウイルス型の回復阻害か……っ」
『自分の回復を阻害している因子』を見つけ出していた。
オートで解析しつつ、攻撃しつつ、その上で、
自分自身でも、自分の不具合を解析していた。
『今できる最善』に『より深い最善』を重ねて、
問題点をあぶり出すと、
「全身に広がっとる……魔法で対処は無理……」
即座に判断すると、
「……『初期化』するしかないか……くそが……」
そうつぶやくと、
ザンクは、ザンバグを使って、
自身のデータを初期化していく。
それを見た竜人は、
「っ! ダメだ! 許可しない! 貴様が得た力は、『真・神帝陛下』のもの! 勝手に消去するなど許さない!」
そう言いながら、瞬間移動で、ザンクの目の前にくると、
『ザンクの首をへし折って、息の根を止めよう』とした。
だが、
「……っ?!」
そのザンクは残像だった。
より正確に言えば、わずかに質量をもった思念体。
決して見破られないように、看破されないように、
繊細な注意を払って仕上げた思念体だったから、
――どうにか、竜人のセンサーを、ごまかすことができた。