80話 センエースの答え。
80話 センエースの答え。
「センエース! ぬしは、なぜ、そんなにも眩しい!」
感情のままに、思ったことを叫ぶ。
脊髄反射の詰問。
理解できない狂気に対する疑念。
ゾメガの問いに、
センは叫ぶ。
「たぶん、すげぇバカだから!」
それは、なんの意味もない言葉。
『無粋な愚かさ』を詰め込んで、
ただの『無神経な自虐』を叫ぶ。
そんなセンの様を目の当たりにしたゾメガは、
一度、静かに目を閉じて、小さくうなずくと、
「オルゴレアムビースト/エニグマサタナエル:タイプ・ディザスター」
宣言すると、
ゾメガの肉体がググっと膨れ上がっていく。
『老人然とした枯れた姿』とは一変して、
バッキバキの『戦闘に特化したスタイル』に変貌。
『オルゴレアムビースト/エニグマサタナエル:タイプ・ディザスター』は、
数ある『ゾメガの変身形態』の一つで、『近接物理』『厄災属性』特化型の殴り合いをメインとした変身。
比類なきパワーと、そこそこのスピードが売り。
殴打のインファイトでごり押ししていく脳筋スタイル。
見た目はだいぶイカついのだが、
ゾメガのビルドとまったく合っていないので、正直、そんなに強くない。
もし、この形態で、ドーキガンと殴り合いをしたら、一方的にボッコボコのフルボッコにされる。
本来、ディザスタースタイルは、『魔法に対して強い耐性を持つ難敵』に出会ってしまった時のための変身形態なのだが、今回、ゾメガは、そういう『対策』のためではなく、ただ純粋に、センと殴り合いたかったから、この変身形態を選んだ。
センを『殺すことだけ』が目的なら、
もっと適した変身は他にいくらでもある。
「センエース。本気で行く。殺してしまうかもしれんから、どうにか生きのこれ」
むちゃくちゃなオーダーを出してくるゾメガ。
いつものセンなら、
ファントムなトークで返していくところだが、
しかし、『今のゾメガ』のセリフには、『真摯な想い』が込められていたため、
中身のない言葉で茶化すことはできなかった。
「――心配するなよ、ゾメガ・オルゴレアム。俺は、俺より強い程度の雑魚に殺されたりしねぇから」
センの言葉に、ゾメガは破顔した。
自然と力があふれてきた。
理由は分からない。
なぜだか、センと対峙していると、心がポカポカと強い熱を持つ。
じんわりと暖かい熱なのだけれど、きっと、この熱は、ただ高温なだけの灼熱なんかよりも、ずっと重たい。
「だらぁああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!」
ゾメガは、これまで、
『本気』というものを出したことがない。
そんなものを出す必要がなかったから。
ドーキガンと敵対していれば、その可能性もあっただろうが、
ドーキガンとは、なぜか、初対面の時から意見が一致していたので、
殺し合いに発展することなどはなかった。
だから、ゾメガは、今日、はじめて本気を出す。
魂魄を燃やして、
センに、全力の特攻を決め込む。
とんでもない速度で突撃してきたゾメガのムーブに対し、
センは、
「全然見えねぇけど、なんか分かるぞ、ぼけぇ!」