73話 ミシャが邪神である可能性はゼロじゃないやも。
73話 ミシャが邪神である可能性はゼロじゃないやも。
「むっ……」
ミシャの龍毒をもろにくらったドーキガンは、
(……これは……すごい……素晴らしい魔力……デバフ魔法だけに限定した場合、これほどの魔法をくらったのは、生まれて初めてかもしれない……)
ミシャの、とてつもなく練度の高い魔法を受けたことで、
ドーキガンは、
(……彼女が邪神だという話……100%の嘘だとは言えないかもしれない……)
『高い確率』で『彼女が邪神だ』などとは思っていないが、
しかし、『そうである可能性は決して0ではない』というランクにまで、彼女に対する警戒心に引き上げられる。
(予言によると、邪神は、存在するだけでも、周囲の人間を殺してしまうという話……となると、邪神が、即死系や毒系スキルの高次能力者である可能性は非常に高い)
昔から、邪神の能力については、ずっと考察してきた。
具体的な詳細が分からないので、完全な推測になるのだが、
予言の内容が全て事実だとすれば、
まあ、『即死系』や『毒系』を得意とする化け物だろう、
――と、ドーキガンは、まっすぐな推論をたてた。
だから、かなり高位の毒系魔法を受けたことで、ミシャが邪神である可能性は、先ほどよりは確実に高まった。
……まあ、しかし、とはいえ、
(……だからといって邪神判定を出すのは、あまりに暴論……)
『毒が得意だから邪神』――と、脊髄反射で答えをだすほど、ドーキガンは、愚かじゃない。
(毒の魔法を得意とする魔法使いなど、探せば、世界中にたくさんいる)
そう結論づけたところで、
ドーキガンは、『ミシャ=邪神』説を、
いったん、頭の中から排除する。
それと、ほぼ同じタイミングで、
センが、魔力とオーラを練り上げて、
「そこの天才剣士ぃいい! 俺が相手だぁああああ! 行くぞ、ごらぁああああああああああ! 最初にちゃんと言っておくがぁあああああ! 俺はそんなに強くないから、ちゃんとナメろよぉおおおおおおおお! ゴリゴリに手加減することを、激烈に推奨するぅううううううううう!」
と、莫大な気合いと共に、切実な願いを叫びながら、
センは、ドーキガンに特攻を決め込む。
『今の自分に出来る全部』を、
『この一撃』に投入していた。
その一手を見たドーキガンは、
(……素晴らしい動きのキレ……っ)
感嘆する。
センの『肉体の連携率』は目を見張るものがあった。
しなやかで、豪快で、どこか繊細。
積み重ねてきたのが分かる。
(これだけの資質を魅せつけられていないが、まったくもって『天才的』とは感じないという異質……)
ドーキガンは、直観で確信する。
目の前にいる人物は、決して天才ではない。
(かなり抽象的というか、あまりにも感覚的な話になるけれど……『天賦の才』には『キラキラ』とした宝石のような輝きが伴うもの。彼には、それがまるでない……)
自分でも言っているとおり、これは、完全に『感覚』の話でしかない。
絵画を見た時に感じる『印象』と、系統的にはほぼ同等。