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69話 彼女が邪神である証拠はどこにもない。


 69話 彼女が邪神である証拠はどこにもない。


「人類の危機なんだぞ! 悠長ゆうちょうに構えているひまはない! 俺を疑っている余裕があるなら、あいつらを滅ぼしてくれよ! あんた、人類の救世主なんだろぉ!」


「もし、仮に、あそこにいた二人が邪神と災厄なのだとしても、あの程度であれば、余裕で対処できますので、今すぐに、どうにかする必要性は感じません」


 そう言いながら、

 ドーキガンは、剣を構える。


「――迫真の演技で、私のスキをつこうという作戦自体は悪くないと思いますが、もう少し、ネタを練った方がいい。『あの場にいた子供二人が邪神である』という嘘を信じるほど、ボクは愚かではありませんよ。それに、邪神の居場所は目星がついています。まだ、確定ではありませんが、しかし、『あの場のいた子供』と、『僕が警戒している相手』を比べたら、1000人中1000人が、『ボクの警戒している相手』を怪しむでしょう」


「……っ……ぐ、ほ、本当なんだよ……『邪神の闇』を、俺は見た……邪神自身が見せつけてきたんだ……あいつなんだよ……あいつが邪神なんだ……っ」


 涙ながらに、そう訴えながらも、

 しかし、どこかでリグは、

 『信じてもらえなくても仕方がない』と思っていた。

 なぜなら、仮に、自分が、この話を他人から聞かされていた場合、

 信じないと思うからだ。


 リグは、猪突猛進なところがある盲信系のバカ野郎だが、

 『地頭が悪い』というわけでも、

 『現実や社会がまったく見えていない』というわけでもないので、

 『ミシャが邪神である』ということを信じさせるのが『いかに難しいか』は、重々理解できていた。


 ――初めて対峙した時は、

 ミシャから、明らかに『普通ではないオーラ』が漏れていたから、

 優秀な巫女か、あるいは、ドーキガンに見てもらえれば、ミシャが邪神であると鑑定してもらえるはずだと思っていた。


 しかし、センに『力の大本』を封じられている今のミシャでは、

 その鑑定をするのはほぼ不可能。


 なぜかサッパリ分からないが、

 センは、『邪神の力』を完全に封じ込んでしまっている。

 その点に関して、リグは、心底不思議に思っているが、


 ――セン当人に、

 『なぜ、邪神の力を封じ込めることができるのか?』

 と聞いても、

 『根性がハンパないから』

 という、アホまっしぐらな答えが返ってくるばかりで、

 真相はさっぱり見えてこない。


 リグ自身ですら、現状に対して不信感を抱いているというのに、

 他人に真実を伝えることなど、できるわけがなかった。


 だが、それでも、リグは諦めるわけにはいかなかった。

 50年も奴隷を続けるなどありえない。

 自分一人だけが、この状況に陥っているのであれば、

 もしかしたら、どこかで諦めもついたかもしれないが、

 ラーバと一緒に、同じ目にあっているため、

 どうしても、諦めることが出来なかった。


「頼む……ドーキガン・ザナルキア……人類の救世主よ……俺たちを救ってくれ……せめて、ラーバだけでも――」


「素晴らしい演技力ですね。その技術だけはなかなかのものです。だからこそ、嘘の程度が低いことが悔やまれますね。もう少し、リアリティのある嘘で訴えかけられていた場合、あなたの作戦がハマっていた可能性はゼロじゃない」



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