66話 数多存在する知人の中でも、ぶっちぎりで最強の剣士『ドーキガン・ザナルキア』。
66話 数多存在する知人の中でも、ぶっちぎりで最強の剣士『ドーキガン・ザナルキア』。
「今回は、余だけではなく、後ろの三人にも、ぬしらを狩る役として参加してもらう」
「なるほど、複数戦ですか……」
「げぇ……最悪だ……難易度爆上がりじゃねぇか……」
と、最初は絶望顔になったのだが、
しかし、その直後、ハっとひらめいた顔になり、
「ぃ、いや、待てよ……複数戦にするなら、陛下は、もっと力を抑えることになる感じか? だとしたら、そっちの方がいいか……『対処する人数が増える』よりも『陛下のハンデが増える』方が、こっちとしては得……」
などと、ブツブツつぶやいていると、
そこで、ゾメガが、
「紹介しよう。まずは彼……数多存在する余の知人の中でも、ぶっちぎりで最強の剣士『ドーキガン・ザナルキア』だ」
ドーキガンを紹介された学生たちは、
一瞬、何を言われているのか分からず、ピシっと固まってしまった。
最初に声を出したのはボーレで、
とんでもなく渋い顔をして、
「はぁ? ……はぁ?! ……ウソだろ、マジで言ってんのか……え、本物? うそだろ? ガチだとしたら、え、なに、この最悪な状況……最強魔王と最強勇者を両方相手にしろって? えぇ……なんで……?」
パニックを通り越して、己の不運に怒りすら感じている様子のボーレ。
そんな彼の前にいるカルシィが、若干ひきつった顔で、
「お……お会いできて光栄です、北大陸の勇者様。ただ、できれば、こういう形ではなく、パーティ会場などでお会いしたかったですね」
勇者が『世界最強の剣士』であることは、
南大陸の者でも、当然、全員が熟知している。
だから、カルシィは、
(本当に、全力で手を抜いてくれないと困る……最強の後衛と、最強の前衛のタッグ……まともに相手なんかできるわけがない……というか、どれだけ手を抜かれたとしても、相手になる気がしない……)
そんな風に、『ここからの戦闘』を想い、頭を抱えるカルシィの後ろで、
センが、
(……将来のバグ戦のために、ドーキガンとは、どこかでつながりをもっておこうと思っていたが……今日じゃないんだよなぁ……この状況で会いたくはない相手ナンバーワン……なんで、いるんだよ、マジでぇ……)
などと、そんな風に悩んでいると、
ゾメガは、
ドーキガンの横にいる『仮面をかぶった男』を指さして、
「そして彼は、北大陸でも指折りの召喚士ポール。わけあって名前と職業以外の情報は隠させてもらうが、その能力は、我々にも匹敵する」
そんな説明を受けたカルシィは、
(……陛下や勇者に匹敵する? そんなもの、エルメスぐらいしかいないのだが……)
ドーキガンとゾメガに匹敵する力を持つのは『北大陸・北方の森を根城にしている聖龍王』ぐらい。
その程度の噂ぐらいなら、最低限、社会情勢を勉強している者なら誰でも知っている。
(召喚士ポール。聞いたことがない。偽名? ……いや、というか、そもそも、陛下や勇者に匹敵する者など聞いたことがない……)