50話 10億ピースぐらいある、何も書かれていない真っ白なジグソーパズル。
50話 10億ピースぐらいある、何も書かれていない真っ白なジグソーパズル。
(……ま、未来のことは、未来の自分が考えればええ)
そう結論付けると、
ザンクは、『シャイニング/G‐クリエイション』の改竄に着手しようとする。
が、しかし、
(……んー……あかんな……覗き見ることだけは出来たけど、チラ見するんが精々で、どうあがいても、改竄するんは無理やな。認証システムを突破する方法がない。東志やったらできたかもしれんけど、ザンクさんの頭では、これをこじ開ける能力はないな)
最後の最後で躓いてしまうザンク。
ここで、諦めずに、ブチ抜こうと頑張るのが東志で、
こういう時、さっさと諦めて、次の方法を思案するのが斬九。
(……最後の関門をブチ開ける一番簡単な方法は……まあ、やっぱり、トウシの権限を奪うことかなぁ)
それは、本来であれば、恐ろしく難易度の高いことだが、
しかし、石ころ帽子をかぶってる今なら不可能ではない。
(不可能ではないけど……これは、単純に、作業量がえぐいなぁ……)
イメージ的には、『10億ピースぐらいある、何も書かれていない真っ白なジグソーパズル』を仕上げなければいけない、みたいな感じ。
別に、パズルを完成させることは不可能ではないのだが、
とにかく、時間だけは、絶対にかかってしまう、というのが問題点。
(……これ、下手したら、年単位になるなぁ……でも、こんな、クソおもんない単純作業に、そんな時間は使ってられんぞ……どうしよう……んー、でも……まー、しゃーないか……)
覚悟を決めると、
ザンクは意識を切り替えた。
脳を並列に働かせて、
99,9%を、パズルの方に使い、
残り0,1%を生命活動の維持に回す。
歩いたり、食事をしたり、返事をしたり――『そういう部分の日常生活の処理』を0,1%だけでこなそうとする。
これは、何かに集中している時のザンクがよくやること。
脳の並列回転は、田中家の中だと、出来る者は結構多い。
――裏で、ザンクが、そんなことをしている間、
モナルッポとTの会話は続いていた。
「バーチャ様やったら、ちょうど、特別鍛錬室で訓練中やから、機嫌しだいでは、相手してくれるかもなぁ」
「その、特別鍛錬室というのは、どちらに?」
「ヒマやし、連れてったろか?」
★
城の地下に設置されている『特別鍛錬室』で、
バーチャは、配下の面々と、乱取りをしていた。
バーチャは、自身に対して、無数の『ハンデ装備』を課して、
すべてのステータスが大幅に軽減された状態なのだが、
しかし、それでも、配下連中は、まったく相手になっていない。
八方から、どれだけ、攻撃をくわえようと、
バーチャは、その全てを、涼しげに回避してしまう。
その様子を目の当たりにしたモナルッポは、
(やはり、別格……バーチャは、ただ数値が大きいだけではなく、芯の部分に、確かな戦闘力がある……こいつに勝つのは、そうとう困難……)
などと、心の中で想っていると、
そこで、バーチャが、チラと、モナルッポに視線を流してきた。
バーチャの視線とカチあったと同時、
モナルッポは、元気よく、
「バーチャ様、私も、手合わせに、参加させていただけませんか?」