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32話 やかましい。


 32話 やかましい。


(召喚権が切断された?! なぜだっ?!)


 カバノンは動揺する。


 何が起こったのか、理解するのがむずかしかった。

 分かったことは一つだけ。

 ヘルズ覇鬼の召喚権を失った――それだけ。



(どうして……っ……なんで……っ?!)



 何が起こったのか分からず混乱しているカバノンの視線の先で、

 ヘルズ覇鬼は、


「グギィイ……ギギギィイイッッ!」


 頭を抱えて、苦しみだしていた。


「ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」


 苦しそうに、黒い血を吐き散らかして、

 膝から崩れ落ち、のたうちまわる。


 とにかくうるさくて仕方ない。

 理性の全てを失って、生命としてのタガが外れているように見えた。


 そんなヘルズ覇鬼の異様さを目の当たりにして、各国の代表たちが、ザワつきだす。


 セファイルのサーナ王女が、震えながら、


「あ、あれは……ま、まさか……」


 彼女は、一度、経験したことがある。

 滅多にないことだが、

 過去に一度だけ、

 ――モンスターが『壊れ堕ちるところ』を、その目で見たことがある。


「同じ……や、やばい……っ」


 モンスターは、たまに壊れる。


 なぜ、そんなことが起こるのか、原因も理由も何もわからない。

 だが、たいていの者は知っている。

 『壊れ堕ちたモンスターが、とんでもなく厄介である』ということ。


 壊れ堕ちたモンスターは、完璧に理性を失い、ただ破壊を繰り返すだけの暴走機関車となる。

 それだけならまだいいのだが、壊れ堕ちた時は、たいてい、モンスターの命のリミッターが外れ、存在値が爆上がりしてしまうのである。



「グゲゲゲゲハガガガギグゴソガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」



 ヘルズ覇鬼の全身が、メキメキと膨れ上がる。

 魔力とオーラが、目に見えて暴走している。


「グギィイ、グギィイイ……ッ……ガァアアアッ!!」


 完全に壊れ堕ちてしまったヘルズ覇鬼は、

 ギラリと、瞳を光らせて、

 破壊対象をロックオンする。


 その瞳が捉えているのは、レバーデイン。

 壊れたヘルズ覇鬼は、レバーデインを視界にとらえると同時、

 飢えた獣みたいに、一切の躊躇なく、予備動作もほぼなく、

 一瞬かつ、一直線で、レバーデインの喉元にくらいつこうと襲い掛かった。


「っっ、ぅ、うぉおぉおおっ!」


 前触れもなく、突然、襲い掛かられて、パニックになりかけたレバーデイン。

 だが、


「くぉおっ!」


 持ち前の反射神経で、どうにか、ギリギリ、ヘルズ覇鬼の特攻を回避する。

 危機的状況に陥ったことで、脳が一瞬で沸騰し、

 意識と身体が戦闘モードへと切り替わる。


 ――極限状態に落とされた時の対応で、その人間の本質が見えてくる。

 平常時に偉そうなことを言っていても、いざ、緊急事態になると、おろおろするだけで何もできないと言う者は多い。


 レバーデインは、困難を前にしたら、ちゃんと、処理能力が働くタイプの人間だった。



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