27話 ゆるぎないアホの子を貫き通すモナルッポ様。
27話 ゆるぎないアホの子を貫き通すモナルッポ様。
「みなさんの召喚獣と俺の召喚獣、どっちが強いか、競わせてみませんか? それで、もし、私の召喚獣が勝ったら、みなさん、私のお願いをなんでも一つ聞いてくれません?」
「それは、非常に面白そうな提案ですねぇ。ちなみに、そのゲームで私が勝った場合、王子が、私のお願いを聞いてくださるのですか?」
「いや、それはダメでしょう。あなたは、最上級のモンスターを召喚できるんですから。勝って当たり前の陣営はご褒美無し。勝つ可能性が低い私が勝てたらご褒美。そういう線引きがあって、はじめて、フェアなゲームになる。そう思いません?」
などと、勝手気ままなことを口にするモナルッポ。
ただ、モナルッポに『お前も召喚してみろ』と促したのはカバノンなので、
カバノンは、立場上、この提案を受けるしかない。
『立場がある者』同士の『人間関係』とはそういうもの。
感情や合理性だけで会話できるのは庶民の特権。
「おっしゃるとおりですね。わかりました。では、そのルールでいきましょう」
目の奥が笑っていない笑顔でそう言うと、
指先に魔力を込めて、
空中にジオメトリを描くと、
「ヘルズ覇鬼、こい」
王級のモンスターを召喚した。
先ほどのお披露目の時は、『最上級モンスター』の豪覇鬼しか召喚しなかったが、
今回は、自身に召喚できる中で最強の王級モンスター『ヘルズ覇鬼』を召喚する。
その意図を、この場にいるだれもが、即座に理解する。
これは、すなわち、『こんな空気にしてしまった詫び』である。
カバノンは、性格が悪い男だが、
しかし、それなりに空気を読むことはできるし、
国家主席としての品格というものも、なくはない。
だから、『ヘルズ覇鬼を召喚する』という行為で、周囲の面々に対して『謝罪の意』をしめした。
そんなカバノンの潔い態度に対し、レバーデインは、
(……ほう……小ズルいだけの男だと思っていたが、なかなか礼儀が分かっている……)
カバノンの『プライドの高さゆえの潔さ』に対し、
レバーデインは、『最低限以上の敬意』をしめす。
そんな、『マウントの空中戦』が、裏で密かに行われていることなどカケラも理解していない――風を装っているモナルッポは、そのまま、『ゆるぎないアホの子』を貫き通す。
「あれ? カバノン国家主席、あなたが、さっき召喚した鬼は、もっと貧相な鬼じゃなかったですか?」
「ヘルズ覇鬼は、一日に一度しか召喚できないというアリア・ギアスが乗っている『私の切り札』です。アリア・ギアス付きの限定条件能力ですので、緊急時以外は、基本的に、封印しているのですが……王子ほどの類まれな召喚士を相手にする以上、上限を見せなければ失礼にあたると思いまして」
「へぇ、そんなに俺を高く評価してくたんすか。いやぁ、見る目があるなぁ。お察しのとおり、俺は、たまに、バカあつかいされますけど、実は、けっこうやる男なんすよ」
ヘラヘラ笑いながら、そんなことをいうモナルッポに対し、
カバノンは、
(己を愚者だと理解している者は、まだ、救いがある……しかし、自分の愚かさすら認識できていなカスは、本当に、救いようがない……)