22話 セファイルの王女サーナはハンパない。
22話 セファイルの王女サーナはハンパない。
サーナは、序列最下位の弱小国セファイルが誇る天才美少女。
すべてにおいて優れた才能を有する、歴代最高峰の万能超人。
もちろん、モナルッポやドーキガンと比べれば劣るのだが、
北大陸の人間の中では、間違いなく十指に入る強者。
彼女が生まれたことで、セファイルは存在感を増した。
彼女が生まれるまでは、『本当に何もない超弱小国』として認知されていたが、
サーナの登場で、セファイルは『価値のある国』として認識されるようになった。
――だからこそ、『彼女が抱えているプレッシャー』は大きい。
今回の大研究会でも『他国に存在感を示そう』と、寝ずの努力を続けてきた。
国のため、家族のため、臣下のため、民のため、
サーナは、これまで、ずっと、ずっと、ずっと、努力を続けてきた。
(正直、誰かに変わってほしい……私以上に優れた弟か妹が生まれてくれればいいのに……そうすれば、楽になれるのに……)
それが、彼女の本音。
いつだって、彼女は、現状の『国を背負っている天才』という重荷から解放されたいと願っている。
だが、責任感が強いので、決して、無責任に放棄することはないし、その心情を表に出すこともない。
――そんな彼女が、今回、大研究会の場において召喚したのは、
『王級』の星霊種モンスター、アストラルマジシャン。
強力な攻撃魔法・回復魔法を数多く扱えて、剣による接近戦闘も得意という、オールラウンダーな便利召喚獣。
龍種などと比べると迫力にかけるが、
どんな場面にも対応できる万能性と、忠誠心の高さと、扱いやすさなどから、召喚士からは非常に好まれている星霊種。
『高位の星霊種を美しく扱える者は、召喚士として一流である』という評価を受ける。
「さすが、サーナ王女。とても美しいアストラルマジシャンですね」
主催国であるミルスの王子レバーデインに、そう言われて、
サーナは、微笑みながら、
「ありがとうございます。王子が召喚した『ブラッディ・スルト』も、素晴らしいと思います」
チラっと、レバーデインの横にいる『炎をまとった召喚獣』に視線を送る。
『ブラッディ・スルト』は、
アストラルマジシャンと同じ階級である『王級』の自然種モンスター。
魔法攻撃の火力の高さが売りのアタッカータイプ。
『炎が弱点の敵』を相手にすれば無類の強さを誇る化け物。
褒め返しをされたレバーデインは、心の中で、
(やはり、サーナは、強く警戒すべき対象だな……セファイルは、ゴミみたいな小国だが、この王女だけは本物の価値を持つ……)
レバーデインは、それなりに召喚技能が得意な方。
対して、サーナは、ガチンコの前衛肉体派タイプで、
召喚技能は、あまり得意ではないというウワサ。
だが、それでも、レバーデインと同等かそれ以上のモンスターを召喚できる力を持つ。
(一騎打ちをすれば、私が負けるだろう……)
レバーデインの評価は正しい。
サーナの存在値は630。
彼女に本気を出されれば、レバーデインでは歯が立たない。